電気興業は11月8日、信越化学工業の石英クロスと低誘電樹脂を用いた新しい低損失基板を採用した、電気特性と機械強度を両立したローカル5G向けミリ波アンテナの開発に成功したことを発表した。

ミリ波用アンテナでは、伝送線路の損失や線路からの不要放射の影響を受け、アンテナ性能の低下が起こりやすくなる点が課題とされている。この性能低下には、アンテナの構造とアンテナを構成する基板材料が大きく影響することから同社は今回、性能低下を防ぐべく「立体的な給電回路構造」と「高性能な誘電体基板(石英クロスを使用)」を採用し、安定した性能を実現することにしたという。

特徴は、以下の3点としている。

  1. 損失の少ない回路を実現
  2. 小型の構造を保ったまま、不要放射の抑制が可能
  3. 広帯域・高性能のアンテナの開発に成功

1つ目について、今回新たに採用した基板は、低誘電率・低誘電正接の特性を有するとともに、低粗度の銅箔に高い接着力を持つことから損失の少ない回路を実現したという。

2つ目については、多層化した基板の内層に給電線路を立体構成することで、小型の構造を保ちつつ、不要放射の抑制が可能となったとする。

そして3つ目については、多層化した基板の内層に給電線路を立体構成することで、アンテナ素子配置の自由度が増加。それにより、ミリ波においても多様なアンテナを実現可能とした。

なお、今回の開発成功により、これまで困難だった高周波帯(ミリ波帯以上)における安定した電気的特性を有するアンテナ開発の実現が見えてきたという。今後については、Beyond 5G/6Gにおいて必要となる、さらに高い周波数帯においても、今回のアンテナに適用した構造および誘電体基板(信越化学工業が材料開発協力)の適用が期待されるとしている。

  • 今回開発されたアンテナの外観とその指向性

    今回開発されたアンテナの外観とその指向性 (出所:電気興業Webサイト)