優れた研究を行う若手女性研究者に贈る第4回「輝く女性研究者賞(ジュン アシダ賞)」を、明治大学農学部農芸化学科の戸田安香特任講師に授与する、と科学技術振興機構(JST)が6日発表した。また、女性研究者の積極支援に貢献している機関を表彰する「輝く女性研究者活躍推進賞(ジュン アシダ賞)」は東北大学に、「輝く女性研究者賞(JST理事長賞)」は東京大学生産技術研究所の杉原加織講師に決まった。表彰式は同日、JSTのイベント「サイエンスアゴラ2022」の一企画として行われた。
戸田氏は鳥類の一部が花蜜など甘い食物を検出するようになったメカニズムの解明や、霊長類の旨味受容体の進化など味覚における研究で世界を牽引している。独創的でスケールの大きな成果や国内外への積極的な情報発信が評価された。
東北大学は「サイエンス・エンジェル制度」(現サイエンス・アンバサダー制度)により女子中高生の理系進学を促進。また、女性教員比率や博士課程の女性比率の向上などに成果を上げており、他機関のモデルになっている。
杉原氏は脂質を中心としたナノ材料分野で研究を進め、近年では抗菌効果を持つペプチドや医療用不織布マスクについても研究対象を広げている。商品開発プロジェクトでも研究リーダーを務めるなど、チャレンジ精神に満ちた研究活動を行っている。
表彰式は日本科学未来館(東京都江東区)で開催された。続くトークセッションには受賞者のほか高校生2人も参加。「高校生×研究者 女性研究者の日常を聞いてみよう」と題して、研究を進める上でのヒントなど、それぞれの経験談を交えて議論が盛り上がった。
杉原氏は、「実験を失敗した時、なぜ、期待した結果が出なかったかを調べる中で、それが新しい発見につながったことがあり、私はそれを大切にしている」と自らの体験を紹介した。それを受けて、東北大学の大隅典子副学長も「学生が実験をして結果にばらつきがあり明確な分析結果がでないことが時々ある。そんな時、私はだめだから実験をやり直しなさいというのではなく、ばらつきが出た原因を振り返って考えてみるよう助言している。予想通りでない結果は、むしろ新しい発見につながるかもしれない」と発言した。
戸田氏は「自分の好きなことや関心のあることを追求していけば、無駄になる経験はなく、それが研究につながる。そして自分の分野に限らず、いろいろな分野の方と関わることで、よりスケールの大きな研究ができると思う」と分野を越えた連携の大切さを語った。
輝く女性研究者賞は2019年、世界的デザイナーだった故芦田淳氏の基金をもとに創設された。今年も4~6月、原則40歳未満を研究者の対象として公募。鳥居啓子米テキサス大学教授を委員長とする選考委員会で審査した。各受賞者にはJSTから賞状と賞牌が、戸田氏には副賞として同基金から100万円が贈られた。表彰式とトークセッションの動画は後日、サイエンスアゴラ2022の特設サイト内で再生可能となる。
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