長崎大学熱帯医学研究所 国際保健学分野 の伊東啓助教(筆頭著者)、重田桂子協力研究員、山本太郎教授は11月7日、静岡大学の守田智教授(責任著者)と共に、国内の性風俗産業(ここではソープランドに限る)における性接触ネットワークの一部を分析することに成功したと発表した。
「誰が誰と性交渉を行ったか」という性接触のネットワークは、社会における最も重要な社会ネットワークの一つだが、技術面やプライバシーの問題から個人的な性接触の情報を正確に収集することは困難を極めるという。
そこで、伊東教授らはここ数年で急速に拡大してきた性風俗店のオンライン顧客レビュー(口コミ)を掲載している商用サイトに着目した。同サイトには、サービスを受けた男性顧客が女性従業員(セックスワーカー)に対して行う口コミ投稿機能がある。
伊東教授らは投稿された口コミから性風俗産業(ここではソープランドに限る)に関する男性顧客とセックスワーカーからなる性接触ネットワークを再構築して分析。これにより、巨大な性接触ネットワークを抽出し分析することが可能になったとしている。
分析の結果、多くの人々の性接触は少人数(数人以下)との関係にとどまるが、一部には極めて巨大な性接触ネットワークを持つ人が存在しているという「スケールフリー」の特性を持つことがわかったという。
また、男性顧客は同じ県内・同じ店舗内の複数のセックスワーカーを訪問する傾向があるほか、複数の県や店舗をまたいでサービスを利用する男性顧客が、離れた地域や店舗を橋渡しすることで、全国ソープランド性接触ネットワークを緩やかにつないで“世間を狭く”していることも明らかになったとしている。
性接触ネットワーク上の平均距離を計算すると9.87になり、スモールワールド性を持っていることがわかったが、これは国内のどこかで発生した性感染症がわずかな人数を経て全国規模に拡散することを意味するという。