キオクシアは11月2日、大容量ストレージに蓄積した学習データを知識として参考にするニューラルネットワーク「記憶検索型AI」を用いた画像分類技術を開発したことを発表した。
詳細は、イスラエル・テルアビブで2022年10月23日から27日まで開催されたコンピュータビジョン分野の国際会議「European Conference on Computer Vision 2022 (ECCV 2022)」にて同月25日に口頭発表された後、同国際会議の発表論文をまとめた学術誌「Computer Vision - ECCV 2022」に掲載された。
現在のAI技術は、ニューラルネットワークが“重み”と呼ばれるパラメータを学習の過程で調整することで、さまざまな知識と能力を獲得する仕組みだが、一度学習したニューラルネットワークが、さらに新たな知識を獲得するには、最初から学習し直すか、新たな知識を追加で学習することになる。そして、前者では時間や消費電力のコストが大きくなり、後者では知識を追加するためにパラメータを変更することとなり、習得済みの知識や能力を失う「破滅的忘却」の問題を抱えていた。
そこで同社は今回、ニューラルネットワークを用いた画像分類におけるコストや精度の課題を解決するため、大容量ストレージに大量の画像データ、ラベル、画像の特徴量などの情報を知識として記憶し、ニューラルネットワークがストレージに記憶されたそれらの知識を参考にして、画像を分類するという手法を開発することにしたという。
同方式では、新しく入手した画像のラベルや特徴量のデータをストレージに追加することにより、知識の追加や更新を行うことが可能なため、ニューラルネットワークの再学習や破滅的忘却につながるおそれのあるパラメータ変更が不要になり、画像分類の精度を従来方式よりも高く維持することができるとする。
また、ニューラルネットワークが画像を分類する際に、ストレージの中で参考にしたデータを可視化することで、分類結果に対する根拠を示すことができ、AIの説明可能性の改善やブラックボックス問題の緩和も期待できるとするほか、参照したデータを解析することで、参照された頻度によって、知識の有効性を評価できるという特徴もあるという。
なお同社では、「『記憶』で世界を面白くする」というミッションのもと、画像分類だけでなくほかの領域にも応用範囲を広げ、大容量ストレージを活用したAI技術(記憶検索型AI)の研究開発を進めていき、AI技術・ストレージ技術の発展に貢献していくとしている。