OKIは10月31日、運送業の配送コスト削減に向けて熟練者が行っていた配車調整業務について、同社の「コスト最小型ルート配送最適化AI」によって配送時間調整などの配車技能をAI化させることで、業務の属人化解消に貢献するプログラムを開発したと発表。同日、記者発表会を開催し、サービス化への見通しなどを説明した。

  • 記者会見に登壇したOKIの玉井秀明氏、川口勝也氏、前野蔵人氏、青木聡氏(左から順)

    記者会見に登壇したOKIの玉井秀明氏、川口勝也氏、前野蔵人氏、青木聡氏(左から順)

OKIが運送業界に提案する「分配配送」

ドライバー人口の不足や、働き方改革に向けた規制強化による労働時間の減少の影響から、トラック運送業における労働力不足が深刻化している。また、コロナ禍の影響を受けた小口配送の増加や燃料費の高騰から、トラックの積載率が低下して走行コストは上昇しているため、配送効率の低下が課題として表出している。

OKIは、トラックによる配送能力を「ドライバー人口」×「労働時間」×「配送効率」に分解し、その中でもデジタル技術による配送効率の向上に着手。最適な配送ルートによって走行距離を最小化させながら、トラックの積載率を上げることで、運送業におけるサプライチェーンの最適化を目指しているという。

そこで同社は、1つの配送先店舗に対して複数台の車両を訪問させることで、積載率を向上させ生産性の高い配送を可能にする方法に着目。OKIはこの手法を「分割配送」と呼び、積極的な活用を進めている。分割配送を活用することで、1店舗に対して1台の車両を必要としていた従来手法に比べ、車両走行距離や車両数を削減し約20%の効率化に至るとする。

  • 分割配送の仕組みと効果に関する資料

    分割配送の仕組みと効果に関する資料(提供:OKI)

最小コストでの配送計画立案AIに熟練者の知見を追加

そしてOKIは、誰でも短時間で最適化された配送計画を立案できるコスト最小型ルート配送最適化AIを開発した。2021年3月には、物流企業であるロンコ・ジャパンと協力し、実際の業務の中で同AIによる配送ルート最適化が有効であることを確認。同年11月より、ロンコ・ジャパンでは同AIによる分割配送の試行運用が開始されている。

しかし、試行運用の中では、走行距離の削減効果を最大化するためのルート算出によって、店舗での積み下ろし作業の増加や複数車両の同時搬入による煩雑化につながる過剰分割が発生するなどの課題が発生。また、渋滞や通行止めなどの交通情報や、走行が難しい道路などへの配慮が必要で、そのために熟練者による配車表の修正作業が発生していたという。さらに、人の手による修正が加わることで、AIによるコスト削減効果が低減してしまうことも課題とのことだ。

これを受けOKIは、AI活用前後の費用削減効果を事前に判定することで過剰な分割を防止するほか、高い配送リスクが想定されるルートを除外する機能や、高速道路料金も加味したコスト最小化機能を追加するなど、熟練者に属人化していた配車技量をAI化。これにより、2021年3月時点では1年あたりの削減コストが走行にかかる燃料費分、約360万円だったのに対し、2022年6月のAI本格稼働以降では有料道路利用料も含めることが可能となり、稼働前と比べて約2倍となる700万円ほどまで高めることができるようになったとする。

  • OKIとロンコ・ジャパンによる共創のロードマップ

    OKIとロンコ・ジャパンによる共創のロードマップ(提供:OKI)

「やっと『使えるAI』になった」

今回開発したAIについて、OKIの玉井秀明氏は、「現場で見つかった改善点を反映し、ベテラン従業員の知見や肌感覚を学習したことで、やっと『使えるAI』になったかな、と感じている」と語った。

  • 会見に登壇したOKIの玉井英明氏

    会見に登壇したOKIの玉井英明氏

なお、今回開発されたコスト最小型ルート配送最適化AIについて、OKIは、より多くの店舗配送実施企業に対する提供に向けて、来年度のサービス開始を目指すとしている。