月面の全体に地球の影が落ちる「皆既月食」が8日に起こり、好天なら全国で特有の赤みを帯びた月が観察できる。この月食の過程で、月が天王星を隠す「天王星食」が大半の地域で起こる。日本で次回、月食中に惑星食が起こるのは322年後といい、子や孫の代にかなわぬ希少な機会であることも話題となりそうだ。

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    8日の皆既月食の概要(国立天文台提供)

国立天文台の資料によると、同日の月は満月の状態から午後6時9分に欠け始めて部分食が始まり、9時49分に満月に戻る。その間の7時16分~8時42分に皆既食となる。東の空にあり、皆既の時間帯は高度が比較的高く観察しやすい。

この月食の過程で、小笠原諸島を除く大半の地域で天王星食が起こる。惑星が月の後ろに入る「潜入」は、房総半島付近より西で皆既食の最中に、東では皆既食の後の部分食の時間帯に起こる。惑星が月の背後から再び姿を見せる「出現」はどこでも部分食中に起こる。福岡で8時22分~9時17分、東京では8時41分~9時22分に天王星食となる。

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    8日の天王星食、東京での見え方(国立天文台提供)

天王星の明るさは約6等で、空が暗い場所で目の良い人がやっと見られる程度。月が満月に近いと、双眼鏡や望遠鏡を使っても天王星食を見るのは難しい。しかし今回は皆既食で、月がかなり暗くなる。「通常より観察しやすいが、はっきり見るには双眼鏡や望遠鏡が必要となる」(国立天文台)。皆既食中の惑星食は極めて珍しく、前回は織田信長が石山本願寺を屈服させた1580(天正8)年の土星食、次回は部分食を含めても2344年の土星食という。

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    赤みを帯びた過去の皆既月食(国立天文台提供)

皆既食では月が地球の影に完全に入り込むが、真っ黒で見えなくなるのではなく、赤銅色などと呼ばれる赤みを帯びる。夕日が赤いのと同様、太陽光のうち波長の長い赤い光が散乱しにくく地球の大気を通過するためだ。また大気がレンズのようになって太陽光を屈折させるため、赤い光が皆既食中の月面を照らす。大気中のちりの量などにより毎回変わる微妙な色合いが、皆既月食の見どころの一つとなる。

月食は太陽光が当たる地球の影の中を月が通過することで、地球から月が欠けて見える現象。太陽と地球、月が一直線に並ぶ満月の時に起きる。ただし地球から見た月の通り道(白道)が太陽の通り道(黄道)に対し少しずれているため、満月は地球の影からずれた所を通ることが多い。このため、満月の度に月食が起こるわけではない。

太陽が欠けて見える日食では、月が地球に落とす影の範囲が限られるため、観察できる地域は限られる。これに対し月食は月面に地球の影が落ちる現象なので、発生時間帯に月が見える場所ならどこでも見える。国内で見られる次の部分月食は来年10月29日、皆既月食は2025年9月8日。観察にあたっては新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染防止に留意したい。

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    皆既食中の月が赤く見える理由(国立天文台提供)

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