日立製作所が10月28日に発表した2022年度上半期(4~9月)の連結決算(国際会計基準)によると、同社の純利益は前年同期比47%減の1725億円だった。リスク分担型企業年金制度への移行、WACC(加重平均資本コスト)上昇による日立エナジーにかかるのれんの減損損失の計上、前年同期に計上した海外家電事業の売却益がなくなったことなどの一時的な要因により、純利益が減少したとしている。
同日、オンラインで会見を開いた執行役副社長CFOの河村芳彦氏は、「ウクライナ情勢などの地政学リスク、資源や食料価格高騰と世界的なインフレ高進などのマイナス要因の影響をダイレクトに受けている。調達費の高騰により、前年比で550億円もの影響を受けた。戦略的な在庫調達や売価の見直しなど対策を強化する必要がある」と話した。
一方で、売上収益は12%増の5兆4167億円、営業利益は5%増の3246億円と増収増益を達成。堅調なDX(デジタルトランスフォーメーション)需要でデジタルシステム&サービスの受注が伸びた。同社のIoT基盤である「Lumada(ルマーダ)」事業の売上収益は54%増の8790億円だった。特にデジタルサービスの基盤となるデータ収集や送信機能を備えた機器・設備の開発を手掛けるコネクテッドプロダクト事業が好調で、日本橋エリア最大規模の複合開発プロジェクト向けに、日本国内での日立の昇降機受注で過去最大となる139台を一括で受注したという。
また、世界的にカーボンニュートラル実現に向けた環境関連投資の増加により、日立エナジーの受注も堅調だ。ドイツ南北を結ぶ連系線向けのHVDC(高圧直流送電)変換所や、カナダ・ケベックと米国・ニューヨークを結ぶ国際連系線向けHVDC変換所など、大型案件を複数受注した。
さらに、2022年第1四半期(4月~6月)に中国のロックダウンの影響を受けた日立Astemoも、自動車メーカーの挽回生産や、円安の影響により6~9月期は増収増益を達成。日立が最重要指標と位置付けるコア・フリー・キャッシュ・フローは前年同期から682億円増加し、436億円の赤字から246億円の黒字に転じた。
しかし、長引く半導体不足は日立Astemoを中心に引き続き影響を及ぼす見通しで、日立は現在、マルチ調達や戦略的な在庫調達、代替品の探索などの対策を練っているという。円安による部材価格高騰についても、売価の見直しや原価の低減施策を実施しているとのこと。河村氏は、「半導体の供給は戻りつつあるが、まだまだ見通しが立てられない状況。資金があれば解決できる問題ではなく、自社内で対策を講じる必要がある」と危機感を露にした。
売上収益を地域別にみてみると、北米や欧州、ASEANなどの地域に関しては堅調に推移している。一方で、ロックダウンの影響を受けた中国では減収しており、日本での成長率はゼロという状況だ。海外の売上収益は3兆5238億円で全体構成の65%を占めている。
日立は同日、2022年度通期の業績見通しも発表。売上収益は前年比1%増の10兆4000億円、営業利益は3%増の8770億円になる見通し。米GlobalLogicの買収影響や足元の円安を受け、従来予想からそれぞれ5887億円、320億円引き上げた。純利益の見通しは従来予想の6000億円を据え置いた。
また堅調な成長をみせているLumada事業の売上収益は36%増の1兆9000億円になると予想。同社が重要視するコア・フリー・キャッシュ・フローは前年から400億円マイナスの2500億円になる見通し。
「資源高などの影響によりほとんどの製品の価格はここ1年間で10~12%上がっている。しかし、国内ではこのうちの5~6%しか価格転嫁できていない。今後、顧客にしっかりと状況を説明し、転嫁率を上げていきたい」(河村氏)