スノーフレイクは10月25日から28日にかけて、オンラインイベント「DATA CLOUD WORLD TOUR」を開催している。本稿では、社長執行役員の東條英俊氏がゲストに厚切りジェイソン氏を迎えて行った初日の基調講演の模様をお届けする。
3年間で顧客数は6倍、総収益は12倍に増加
東條氏は「われわれがビジネスを始めてグローバルで10年、日本で3年と、今年は節目の年」と語り、同社のビジネスの好調ぶりを紹介した。例えば、従業員は2019年は1000名弱だったところ、現在は4000名を超えている。顧客数も、2019年は948だったところ、現在は6000を超えている。
そして、総収益も2019年は9600万ドルだったところ、2022年12億ドルを達成している。東條氏は、「われわれはサブスクリプションモデルではなく、ンサプションモデルをとっている。そのため、お客様の消費が進むと利益を計上できる。つまり、総収益は、お客様がそれだけコンピューティングとストレージを使ったバリューといえる」と、この3年で同社のソリューションが大きく伸びたことを強調した。
また、東條氏は同社のカンパニーバリューの一つが「カスタマーファースト」であることを紹介し、その成果として、NPS(ネットプロモータースコア)が72であることを披露した。NPSは、顧客のロイヤリティを図る指標であり、企業のブランド、製品の親しみやすさ、信頼性を数値化したものだという。
東條氏はNPSの業界平均は21であることから、同社がその3倍以上の評価を取得できたとして、自信を見せた。「われわれのNPSは顧客に愛されているという証。今後も、顧客の課題解決を進めることで、NPSを向上していく」と、同氏は語った。
テクノロジーの力で経営の課題も解決していく
続いて、東條氏は今後の方向性について説明した。同社の2人の創業者はデータベースのアーキテクトであり、「クラウドが世の中を大きく変えるだろう。クラウドの中でデータベースの在り方を変えたい」という想いから、2012年に同社を起こしたという。
東條氏は、これまで技術の力で顧客のさまざまな課題を解決してきたが、最近は経営の課題も相談を受ける機会が増えてきたとして、こうしたニーズに応えらえるよう、同社が取り組みを進めていると述べた。
例えば、食品メーカーのクラフト・ハインツ は、コロナ禍で、ロックダウンで工場停止し物流が混乱するなど、サプライチェーンにトラブルが生じていた。スノーフレイクは同社に分析基盤を提供することで、データの可視化を支援しているという。
同社は、データクラウド「Snowflake」を提供しているが、東條氏は「昨今、企業では他社のデータとコラボレーションするニーズが増えている。これにより、データとデータがN対Nで結びつくようになってきており、われわれはこれをデータクラウドと呼んで、発展させていこうとしている」と語った。
同社ではデータとデータのつながりを「ステーブルエッジ」と定義しているが、3年前は373だったステーブルエッジが今は1550に達している。東條氏は「われわれの顧客はグローバルでデータを交換することで、新たな価値を見出し、経営に生かしている。これをデータクラウドの利益として享受している。日本国内でもステーブルエッジを拡大していきたい」と、日本市場での展望を語った。
ビジネスの可能性を広げるデータコラボレーション
モデレーターにForbes JAPAN Web編集長の谷本有香氏、ゲストに厚切りジェイソン氏を迎え、「Why Data Cloud!?」というテーマの下、パネルディスカッションが行われた。
「海外に比べて、日本はデジタル化、DX(デジタルトランスフォーメーション)が遅れていると言われているが、どう思うか?」と意見を求められたジェイソン氏は、次のように答えた。
「米国と日本には違いがある。まず、米国は広いので、シリコンバレーとニューヨークを日帰りで行き来するのは難しい。また、米国は技術を使って成績を出せる人が出世するが、日本は年功序列制が敷かれている。米国は個人主義であり、成功したら出世するが、失敗したら転職する。つまり、米国と日本には、個人で動くか、組織全体で動くかという違いがある」
ジェイソン氏の言葉に対し、東條氏は「パンデミッで人の物理的な接点が失われてしまい、それを埋めるようにデジタルの力で顧客との距離を縮めてきた。その結果、デジタル化が進んできたのでは」と話した。
さらに、東條氏は「ビジネスは1社だけで成り立つものではない。取引先との関係があり、取引先のデータもあわせて見る必要がある。こうした背景から、データのコラボレーションのニーズが出てきている」と、データコラボレーションの需要の高まりを強調した。
ジェイソン氏はデータコラボレーションについて、「ビジネスはモノを作って終わりではない。より広がる可能性があるのに、見えていないのはもったいない。データをコラボレーションすることで、考えたことがない発想が生まれ、ビジネスの可能性が増えるかもしれない」と語った。
誰もが必要なデータにアクセスして知見を得られるのが「データの民主化」
昨今、データ活用を促進するためのムーブメントとして、「データの民主化」が注目されている。東條氏はデータの民主化について、「経営者が見られるデータをすべての従業員が見られることが正しいとは考えていない。データサイエンティストも現場の従業員も誰もが必要なデータにいつでもアクセスできて知見を得られる。これがデータの民主化とわれわれは考えている」と述べた。
ジェイソン氏は、「データなしで、次の一手を決めるのはギャンブルに近い。データを分析すると、いろいろなことが見えてくる。ただし、行動をとる権力がないと現場にないと、データを使えない。したがって、現場レベルで瞬時にデータを使えるというポリシーを定めておけばよいと思う」と、データの民主化を進めるための施策を提示した。
データクラウドはその名の通り、クラウド上にデータを保存しておくことになる。そこで、、東條氏とジェイソン氏から、オンプレミスから移行するにあたってのアドバイスの説明がなされた。東條氏は、次のように語った。
「クラウドに技術的な課題があるの事実だが、市場に出てきて時間が経ち、いろいろなオンプレミスの仕組みがクラウドに移行してきている。データ、アプリケーションの移行のノウハウも蓄積してきている。もはや、枯れた技術といってもよいだろう。よって、臆病にならずに 行った先で無限のコンピュートリソースが使える可能性を考えてみてほしい。データクラウドでは、リソースが無限のクラウドの世界では、もっと簡単にデータとデータが結び付いてイノベーションが起こせる」
ジェイソン氏も、「今までのシステムを基準にするのではなく、最新のクラウドサービスにどんな機能があるのかを知り、それを自社がどう使えるのかを考えることが始まりとなる」と、既存のシステムにとらわれることなく、クラウドファーストで考えることの重要性を強調していた。