日本ヒューレット・パッカード(HPE)は10月24日、オンラインで記者説明会を開き、サーバの管理コンソール「HPE GreenLake for Compute Ops Management」と、データのバックアップと復旧を実現する「HPE Backup and Recovery Service」の2つの分散型エンタープライズIT管理向けクラウドサービスの提供を開始すると明らかにした。なお、両サービスは「HPE GreenLake edge-to-cloudプラットフォーム」を通じて同日に提供開始した。
サーバのライフサイクルをクラウドで管理する「Compute Ops Management」
ユーザー管理やデバイス管理、サブスク管理、タグ管理、認証・認可、API、通知、監査などの共通機能を持つHPE GreenLake edge-to-cloudプラットフォームは、ストレージ管理の「Data Service Cloud Console」(DSCC)、ネットワーク管理の「Aruba Central」、ハイブリッドクラウド管理「HPE GreenLake Central」のコントロールを備え、今回新たにサーバ管理としてHPE GreenLake for Compute Ops Managementが加わり、計4つのコントロールに拡充した。
日本ヒューレット・パッカード コアプラットフォーム事業統括 サーバー製品本部 カテゴリーマネージャーの日野創氏は、サーバの管理・監視に対するニーズが多様化していることが課題となっている点に触れ「データセンターでは大量のサーバリソースを効率的に管理できておらず、中堅・中小企業は専任のサーバ管理者がいないことから管理サーバを用意できない。また、エッジ環境においてさまざまな場所に分散したサーバの管理に苦労している」と指摘。
HPE GreenLake for Compute Ops Managementは、エッジ環境やデータセンターに分散したサーバーを統合管理するクラウドサービス。サーバの導入、監視、管理を行うためのクラウドネイティブな管理コンソールとなり、同社製のサーバがどこにあっても、管理サーバを構築せずに、一元的に導入・統合管理することを可能としている。
また、データセンターだけでなく、オフィスやエッジ環境のサーバでもクラウドベースの直感的かつシンプルな管理コンソールを通じてどこからでも操作でき、システム管理者の工数を削減。大規模なシステムや分散化されたシステムの管理は、すべてのサーバ管理機能へのAPIを利用し、全サーバのライフサイクル管理を自動化できるという。
活用シーンとして、金融では窓口店舗、保険の営業所、通信は基地局、局舎、流通では小売業の店舗、流通倉庫、製造では向上、ヘルスケアでは病院・クリニック、サービスプロバイダーは大規模環境、中堅・中小企業では管理者/管理者不足の環境などを想定している。日野氏は「従来のデータセンターだけでなく、エッジや中堅・中小企業のサーバ管理の課題も解決できる」と胸を張っていた。
同サービスの提供形態は、契約単位は物理サーバ単位、最低契約期間は1年、支払間隔は一括、1カ月、3カ月、1年から選択を可能としている。
「Standard Tier」と「Enhanced Tier」の2種類のサブスクリプションを用意し、前者は中小規模のシステム向け、基本的なデバイス管理機能となり、月額1000円~。後者は大規模や分散化されたシステム向け、他社製品との連携やAPIによる自動化など高度な管理機能と提供し、同2400円~。
ハイブリッドクラウド環境向けの「Backup and Recovery Service」
一方、HPE Backup and Recovery Serviceは、上述した4つのコントロールのうちData Service Cloud Console(DSCC)内にある機能として提供。ハイブリッドクラウド環境のために設計された効率的にデータのバックアップと、復旧を実現するクラウドサービスだ。
同サービスはデータ保護のためのクラウドサービスで「HPE GreenLake for Data Protection」の一部として同サービスは、データ保護のモダナイゼーションを実現する柔軟性を提供し、データ保護要件を満たす迅速なデータ復旧とデータの長期保存を可能としている。
日本ヒューレット・パッカード コアプラットフォーム事業統括 ストレージ製品本部、製品部の関根史和氏は「現状におけるバックアップの課題として、従来からのデータ量の増加やワークロードの多様化に加え、データの保管場所がエッジからクラウドに分散し、巧妙化したサイバー攻撃によりデータが狙われている」との認識だ。
こうした状況に対して、顧客はデータ保護の運用自動化・仮想化、ハイブリッドクラウド環境の一元管理、グローバル共通の保護ポリシー、コスト効率性、サイバー攻撃からの保護を求めているという。
仮想マシン(VM)を保護できる同サービスは、3つのシンプルなステップで5分以内にVMを保護することができ、VMワークロードの保護だけでなく、ハイブリッドクラウド全体でランサムウェア攻撃からの保護をコスト効率性を加味したうえで実施することができる。
関根氏は「DSCCで管理ストレージのスナップショットを取得し、そのデータをオンプレミスバックアップにバックアップし、これを当社が新たに提供するBackup and Recovery Serviceで重複排除・圧縮するという流れになっている。データ保護の3-2-1ルールをハイブリッド環境で実現可能だ。単一のクラウド管理コンソールによる管理とともにデータ保護ポリシーを数クリックで設定できる」とメリットを説く。
これにより、データの暗号化や一定期間変更できない不変性コピーの作成、データ消去時の二段階認証、バックアップデータの本番環境からの隔離などを可能としている。またバックアップ用の重複排除技術「HPE Catalyst」により、ストレージ使用量の削減、クラウド転送時のネットワーク帯域幅の削減、バックアップ完了までの時間短縮、バックアップに使用する領域の削減など、最大ストレージ効率が5倍向上するという。
10月24日からVMware仮想マシンに対応したサービスの提供を国内で開始しており、今後はAmazon Web Services(AWS)、特にAmazon Elastic Compute Cloud(EC2)インスタンスとAmazon Elastic Block Storage(EBS)ボリュームを対象としたサービスを順次加える。
提供形態は課金単位がVM単位はバックアップ対象のVM数、GB単位はクラウドに保存されたデータの重複排除後の実行容量となり、支払い間隔は1カ月。
課金単位コミットなし、ありの2種類の従量課金プラントを用意し、前者はまずは利用してみたい使用量に応じて課金し、後者は使用量と契約期間をコミットすることで単価を安くし、毎月コミットした寮に対して課金し、超過分は量に応じて加算する。
分散エンタープライズの時代に
こうしたサービスをHPEがローンチする背景には、2019年に現CEOのアントニオ・ネリ氏が示した、すべてをサービス(Everything as a service)で提供するという目標に対して、年次カンファレンス「HPE Discover 2022 Las Vegas」において、HPE GreenLakeによりゴールを達成したという宣言がされたことにある。
同社の戦略は「エッジ」「クラウド」「データ」の3つのトレンドとともにあり、日本ヒューレット・パッカード 執行役員 コアプラットフォーム事業統括の本田昌和氏は「今後はグローバルにまたがるさまざまな場所で発生するデータの計算ニーズと、これらをつなぐネットワークが常に変化する時代が訪れ、企業は分散型エンタープライズになる。あらゆるITにおいてas a Service(aaS、アズ・ア・サービス)モデルの需要が高まる」と見込んでいる。
これまで第1章として「“GreenLake化”によるaaS推進」に取り組み、すべてをアズ・ア・サービス化するため「HPE GreenLake」、これを進化させてマルチクラウド管理、ワークロード特化サービス、共通プラットフォームのHPE GreenLake edge-to-cloudプラットフォームを打ち出してきた。
これに次ぐ第2章として同社は「“as a Service商材”によるaaS推進」をテーマとしている。
本田氏は「これまでのアプローチに加えて、あらかじめ製品部門が提供する製品・ソリューションをアズ・ア・サービス化して市場投入していく。この取り組みの肝となるのが、HPE GreenLake Cloud Platformだ。これまではハードウェア、ソフトウェア、構築、保守、運用を丸ごと対応しており、これは継続していく。一方、新しいサービスはお客さまによるセルフマネージとなり、当社として今後注力していく領域だ」と、述べていた。