新潟医療福祉大学(NUHW)は10月21日、栄養を欲しているときにのみ神経ペプチド「ガラニン」が食欲を高めること、逆に栄養を欲してないときは食欲を抑制することを明らかにし、抗肥満薬の有用なターゲットとなる可能性を見出したことを発表した。

同成果は、鹿児島大学 医歯学域医学系の神戸悠輝講師、NUHW 理学療法学科の八坂敏一教授(NUHW リハビリテーション学部/同・運動機能医科学研究所兼任)らの共同研究チームによるもの。詳細は、分子神経学に関する全般を扱う学術誌「Molecular Neurobiology」に掲載された。

先進国を中心に肥満が健康面での課題となっている。肥満を抑制するための抗肥満薬もあるが、現在日本国内で認可されている唯一の抗肥満薬「マジンドール」は依存性・副作用が強いことが課題となっている。また、あまり抗肥満効果が強すぎて、痩せすぎてしまうのもまた別の問題が生じてしまうことから、健康的な適正体重よりも痩せすぎないようにできる新たな抗肥満薬が求められていた。

研究チームは今回、食欲は脳の視床下部において神経細胞同士がコミュニケーションを取ることでコントロールされていることから、そのコミュニケーション手段である比較的小さなタンパク質の神経ペプチドに注目することにしたという。

そしてマウスによる動物実験により、夜間や絶食後の食欲が高まっているときにのみ、神経ペプチドの一種であるガラニンが食欲を高めることを確認したほか、昼間の食欲が少ないときには、ガラニンが反対に食欲を抑制することも明らかにしたとする(夜行性のマウスによる実験のため、活動期は夜間のため、ヒトとは逆となるという)。

食欲を制御するガラニンは、視床下部の中でも特に背内側の領域に存在していたという。また、視床下部のほかの領域にもガラニンが存在することは確かめられたが、「室傍核」に存在するガラニンは不安感を下げる働きが認められたものの、食欲には影響を与えなかったとする。

今回の研究成果を踏まえ研究チームでは、ガラニンシグナルに対する、痩せすぎない新たな抗肥満薬の創生が期待されるとしている。

  • ガラニンシグナル

    ガラニンシグナルを抑制すると、過剰体重を抑制する一方で、痩せすぎにはなりにくくなる可能性があるという (出所:NUHW Webサイト)