凸版印刷は10月21日、東京大学素粒子物理国際研究センター(東京大学ICEPP)と、「量子人工知能(量子AI)」の社会実装に向けた共同研究を、2022年9月より開始したことを発表した。凸版印刷の製造現場における高性能な不良検知や、自治体・医療機関・民間企業の窓口業務における無人化に向けた自然言語処理などへの適用を目指す。

量子AIは、演算に量子コンピュータを利用するAIのことで、言語・音声・画像などの各種データを利用し、比較的短い学習時間で高い精度の予測が可能になると期待されている技術だ。

  • 先行研究に基づいた量子AIのイメージ図 東京大学ICEPP (quantum-icepp.jp)より引用

    先行研究に基づいた量子AIのイメージ図 東京大学ICEPP (quantum-icepp.jp)より引用

凸版印刷は、東京大学ICEPPと連携し、量子情報の手法を利用した機械学習の中でも量子カーネル法に着目。量子カーネル法とは、計算コストを上げることなく、データを高次元の特徴空間に埋め込むことでデータの処理を可能にし、量子コンピュータによる特徴量マッピングや内積計算を用いることで実現する手法だ。

同社はこの量子カーネル法の産業上の応用分野を探索するため、東京大学ICEPP寺師弘二准教授と量子カーネル法の実現化手法とデータ特性との関係を共同で研究する。具体的には、少ない教師データからの学習精度の向上を目指す。さらに、量子カーネル法を活用し、製造現場における不良品データ収集時間の削減、学習時間の低減、不良検知精度の向上を目指す。

両者は今後、量子AIの社会実装によって、人材不足など社会課題を解決し、誰もが暮らしやすい社会の実現を目標に取り組んでいくとしている。