カゴメとNECが9月に設立したAIを活用して加工用トマトの営農支援を行う「DXAS Agricultural Technology LDA」(DXAS)は10月20日、NECの農業ICTプラットフォーム「CropScope」に、少量多頻度灌漑(作物が必要とする量の水や肥料を多数回に分けて少しずつ与え、作物にとって最適な土壌水分量を保つ栽培手法のこと)に対応したAI営農アドバイスと自動灌漑制御機能(灌漑設備と連携し、水や肥料をリモート・自動で制御する機能のこと)を加えたサービスの提案を11月から開始し、2023年4月からの展開を目指すことを発表した。

これにより、営農現場の水不足問題に対応することで、より環境に優しく収益性の高い営農を促進し、世界各国での持続可能な農業に貢献していきたい考え。

同サービスは、持続可能な農業を実現していく上で、水不足への対策は喫緊の課題となっていることを受けて開発されたもの。従来、少量多頻度灌漑は最適な土壌水分量を保ち消費する水の量を削減する栽培手法として一般的に知られているものの、この栽培方法は、刻々と変化する最適な水分量を判断するのが難しく、また、広大かつ複数の圃場をもつ生産者にとっては管理が複雑で作業負荷が大きいことから普及が進んでいない現状があるという。

そこで両社は「CropScope」で提供している水や肥料のAI営農アドバイスを用いた少量多頻度灌漑の実証試験を、2022年4月からポルトガルで実施した。その結果、「CropScope」を活用していない圃場と比較し、約15%少ない灌漑量で収穫量が約20%増え、通常よりも少ない水の量で収穫量を増やすことに成功したという。

この実証試験で得られた成果を踏まえ、少量多頻度に対応したAI営農アドバイスと、作業負荷の軽減につながる自動灌漑制御機能を加えたサービスを、主に欧州、米州、オーストラリアの加工用トマト市場に普及させていくことで、さらなる営農支援を加速していく方針だという。

  • 自動灌漑設備の導入によって灌漑や施肥などのAI営農アドバイスを自動で制御可能となり、煩雑で手間のかかる手動での作業が不要になる