伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)は、行政手続きで使うデジタル証明書の実証実験を2023年1月から開始することを発表した。
この実証実験は、税制優遇制度での活用を想定して、優遇の対象となる商品・サービスの購入履歴や属性情報の真正性を、分散台帳技術を利用して担保できるようにすることを目的としたもの。情報サービス産業協会(JISA)とBlockBasと合同で、Trusted Webの要件を備えたプロトタイプシステムの企画と開発を行う。
想定しているケースは、中小企業者を対象とした税制上の優遇措置の手続きで、JISAが発行する工業会証明書事業でTrusted Webの具現化を目指す。税制優遇の対象となるソフトウェアを購入した企業は、確定申告時にJISA発行の工業会証明書を添付することで、減価償却の特例や法人税額の軽減措置が得られるという。
実証実験では、工業会証明書をデジタルで発行するプロトタイプシステムを開発し、証明書の申請・受付から審査・交付に至る業務プロセスも整理する。実証実験を通して、公的証明書のデジタル化の仕組みやシステムを検討し、行政への申請や交付文書のペーパーレス化・押印レス化の実現につなげるとしている。
プロトタイプとなるシステムは分散台帳技術を利用しており、検証ではオンラインで発行される証明書について真正性や本人性を確認する。具体的には、商品型番・購入時期の購買履歴、会社名・代表者・住所などの各種の属性情報、製造メーカーが発行する商品販売の証明書といったデータをオンラインで照合・確認する仕組みで、機能や性能の要件、課題などを洗い出すという。
JISAとBlockBaseと合同でプロトタイプシステムの企画と開発を行い、CTCは、BtoC向けID基盤クラウドサービス「SELMID」の提供とプロジェクト全体の推進も担う。現在標準化が進んでいるデジタル証明書技術Verifiable Credentials(VC)や、分散型の識別子を表現するDecentralized Identifiers(DID)などの活用で、証明書の発行がオンライン上で完結できる仕組みを確立する。
偽造や模倣を防ぐデジタル証明書の技術は、知的財産権の保護やセキュリティを担保して国際的なデータ流通を促進する、政府提唱のコンセプト「DFFT(Data Free Flow with Trust)」にもつながるもので、CTCはJISAとBlockBaseと共同で、更なるプロトタイプシステムの拡張も視野にこの実証実験に取り組むとしている。