2022年10月18日から21日まで幕張メッセにて開催されている「CEATEC 2022」で、村田製作所は、「Smart Society」「モビリティ」「ソリューション」「社会課題解決・SDGs・ウェルネス」の4テーマにわたるブースを展開。「CEATEC AWARD 2022」のキーテクノロジー部門グランプリを受賞したエッジAIモジュールや、開発中の最新テクノロジーなど、さまざまな技術・製品を紹介している。
CEATEC AWARDグランプリを受賞したエッジAIモジュール
電子部品の製造を主力事業とする村田製作所は、通信用モジュールや車載向けセンサなどさまざまな製品を展示している。
中でも注目を集めるのは、エッジ端末上でのAI推論処理を可能にする2種類のエッジAIモジュールだという。
近年はさまざまな電子機器にAI機能の搭載が広がっている中、従来製品のほとんどは、取得データをクラウドに送信して演算処理を行い再度デバイスに結果を送信する方式を取っている。クラウドを経由した情報処理では、処理時間や通信コストの面で課題が残り、また通信時の情報漏洩リスクに対する懸念があった。
村田製作所はこれらのニーズを受け、AI推論処理専用のICを使用したエッジ搭載用AIモジュールを開発。ブース担当者によると、同製品の開発にはWi-Fi通信モジュールで培われた排熱技術が活用されているとのことで、小型軽量化を実現し省電力化にも貢献することが可能になったとしている。
なお、このエッジAIモジュールは、汎用的なエッジAI展開への貢献などが評価され、CEATEC AWARD 2022のキーテクノロジー部門でグランプリを受賞した。
音声から振動を再現するミライセンスの新技術
村田製作所の子会社であるミライセンスは、3Dハプティクス(触力学)技術を活用し、振動によって力覚(引かれる・押されるなど)や触覚を再現する技術を開発している。今回の村田製作所ブースでは、振動が与える感覚をシンプルなバロメータによって簡単に操作できる編集ツール「AMPTIX」が展示され、デモの体験も可能となっている。
デモ展示では、小型のリモコンを両手それぞれに持ち、センサ部分に親指を軽く当てることで、バイクのエンジン起動時や運転時のハンドル操作の感覚を再現した振動を体験できる。特にハンドル操作の再現では前後に手が動くような感覚を受け、ブース担当者によると「体験した人の中には、リモコンのケーブルが物理的に引かれていると勘違いする人もいる」とのことだ。
また、AMPTIXで振動を編集する際には「前に引かれる/後ろに押される」など感覚的なバロメータに沿って設定することが可能で、電気信号などの専門知識が無くても編集ができるという。さらに、取り込んだ音声データの解析によって自動で振動を生成する機能も搭載しているとのことだ。
加えて、物体表面の感触を再現できる機能では、その感触を図形を用いて視覚的に表現することで、より直感的な操作を実現している。この機能により、数値では把握しにくい程度についてもよりわかりやすく表現し、思い通りの振動を再現しやすくしているという。
ミライセンスのブース担当者は、今後の展開について「ゲーム会社との間でデモ版としての評価を得ており、現在はブラッシュアップを行っている段階」とし、「来年度には正式リリースができるのではないか」と見通しを語った。
硬さを操作できるエラストマを遠隔医療に応用へ
社会課題解決に向けた技術開発の一部として、外部磁気の強弱によって硬さが変わる磁気粘弾性エラストマを展示。ブースでは、磁気粘弾性エラストマの硬さが変わる様子を表現するデモが複数紹介されている。
磁気粘弾性エラストマは、軟質なエラストマの中で微細な磁性粒子を分散固定した複合体で、平常時には軟らかいものの磁力を受けると硬く変質する。また、磁気の強さによって硬さを変化させることが可能で、活用領域として、遠隔医療においてしこりや腫れの状態を再現して伝える遠隔触診などが想定されるとする。
電子部品に限らず社会課題解決に取り組む村田製作所
村田製作所の担当者によると、かつては部品メーカーとしての事業に専念していた同社だが、「近年はソリューションの提供や新事業の開発、スタートアップとの連携にも力を入れている」という。また、社内技術との関連によらず社会課題解決を念頭に置いた新事業創出プログラム「η(イータ)プロジェクト」も立ち上がったとのことで、さまざまな角度で社会課題の解決を目指す姿勢を改めて強調した。