ソフトバンクロボティクスは10月18日、戦略発表会を開催し、新たに提供を開始するプロダクトおよびサービスについて説明した。
発表会に登壇した代表取締役社長 兼 CEOの冨澤文秀氏は冒頭、「ロボットは『作る』から『生かす』フェーズに突入している。当社が持っている世界中で稼働するロボットの膨大なデータを活用し、『ロボットインテグレーター(RI)』として、さまざまな事業者のビジネスを支援していきたい」と述べた。
バーチャルなコンピュータシステムをビジネスの対象としているシステムインテグレーター(SI)に対し、同氏のいうRIは、飲食や物流業界といった物理的なサービス業界に向けてサービスを提供する。「データベースやサーバ、ネットワークを統合するのではなく、ロボットやセンサー、人を業務に合わせて統合する」(冨澤氏)という。
富士経済によると、サービスロボットの世界市場規模は、2021年時点で2兆7410億円、2030年には5兆7628億円と2倍以上の成長が予測されている。サービスロボットが主流になりつつある一方で、1つの施設に複数メーカーのロボットが稼働しているため管理が難しかったり、ロボットやセンサー、システムが統合されていないため最適化が図れていなかったりするケースも少なくない。「さまざまなロボットからどう選び、どう組み合わせ、いかにその力を生かすか。そういう時代に突入しつつある」(冨澤氏)
ソフトバンクロボティクスは、2014年にヒューマノイド事業を開始して以来、2018年に清掃ロボット事業、2021年に配膳・運搬ロボット事業を立ち上げた。同社が展開する人型ロボット「Pepper」は、2022年9月現在、累計販売数は2万台を突破、年間500万回以上接客している。また清掃ロボットの総出荷台数は約2万台で、床清掃走行距離は600万キロメートルと、地球約150周分の距離を走行しているという。
同社はRIとして、これらのロボットの膨大な知見とデータ、ネットワークを活用し、あらゆる業界のDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進していくとしている。
オフィス清掃におけるDXの例を紹介しよう。同社は施設のオーナーにロボット清掃の提案を行うロボット清掃会社SmartBXを2022年5月に設立した。ロボットを提供するだけでなく、アウトソーシングとして、SmartBXがロボット運用を代行する。
これまでの清掃業務は、「どの程度清掃をしなければいけないかという明確な基準がない」「清掃品質にばらつきがある」「人手不足による値上げを要求されている」といった課題があったという。「世界最大の床清掃データを活用し、最適なデジタル床清掃の仕様を提案している。清掃の70%を占めるトイレ清掃・ゴミ捨てなどの人の作業もアウトソーシングでコストダウンしている」と、ソフトバンクロボティクス 取締役 兼 CBOの吉田健一氏は説明した。
清掃だけでなく、同社は飲食業界のDXも推進している。発表会では、今まで提供していた2種類の配膳・運搬ロボットに加えて、超小型の「T8」と中型の「Delivery X1」を追加すると発表。「RIとして施設ごとに最適な機種を提案する」(吉田氏)
また、配膳ロボットだけではなく周辺システムとの連携で、さらなる最適化を図る。座席管理システムやPOSシステム、シフト管理システムなどと連携することで、飲食店の業務を丸ごとサポートできるようになる。
発表会では、シリコンバレーのフードテックベンチャーが手掛ける調理ロボット自販機と「Pepper」、配膳ロボット、注文システムを連携させたデモを公開していた。注文から調理、配膳まですべてロボットが代行していた。
さらに同社は、2024年問題などの物流業界の課題を解決するために、倉庫の自動化を支援するサービスを手掛ける物流自動化事業を2022年に開始。世界の技術で、倉庫内の各プロセス自動化のみならず倉庫全体の業務を最適化していくとのこと。
そして、「今まで培ってきた経験を、サービスとしてロボット開発会社へ提供していく」と、常務執行役員 CPOの坂田大氏はロボット開発会社向けのサービスを開始すると説明した。
ロボットを開発するデベロッパーやメーカーに対して、企画、開発、量産、品質管理、保守・サポートまで幅広いサービスを提供するとのこと。さまざまな課題に直面している事業者をサポートし、ロボット業界全体の活性化を推進していく考えだ。