京セラは10月13日、人間の能力を技術で拡張させる「人間拡張」技術について、同社の人間拡張技術コンセプト「舞(まい)」、および関連するシステム3点の開発を発表。同日に開催した記者会見で、新システムのデモンストレーションを行った。
「舞」をコンセプトとした京セラの人間拡張技術
京セラは人間拡張について、「人に寄り添う技術で、人間の能力の補完や向上、新たな獲得を行うこと」と定義し、人間が持つ身体・存在・知覚・認知という4つの能力を、テクノロジーで拡張させることを目指している。人間拡張技術は今後、ヘルスケア・医療・エンターテインメント・生産現場など幅広い分野での展開が期待されるとのことで、同社は研究開発本部のフューチャーデザインラボにて、研究開発を行っている。
フューチャーデザインラボ所長の横山敦氏は、京セラが掲げる人間拡張技術のコンセプトを「舞」と表現した。人に寄り添う技術の開発を通じて、QOLの向上やコミュニケーションの円滑化などへの貢献を目指すといい、将来的な見通しとして「社内の基盤技術や他社・アカデミアとのオープンイノベーションを活用することで、人間拡張の新規事業を開拓していく」と話す。
3つの人間拡張関連システムをデモと共に紹介
今回発表されたのは、「歩行センシング&コーチングシステム」「フィジカルアバター」「聴覚拡大ヒアラブルデバイス」の3システム。会見ではそれぞれ担当者が登壇し、システムについて紹介。会見後には、3システムすべてのデモンストレーションが行われた。
ワコールとの共同研究で誕生した「歩行センシング&コーチングシステム」
京セラはワコールと共同で、歩行姿勢が与える印象に関する研究を行っており、その中で、日常生活の中で美しく正しい歩き方に変化するように働きかける「健幸(けんこう)システム」の実現を目指したという。
今回発表されたシステムでは、頭部(イヤホン)・腕(ブレスレット)・足首(アンクレット)に小型ウェアラブルセンサを装着し、それらのデータから姿勢計測をリアルタイムで計測することで、AIによる歩き方の印象評価や歩行姿勢の推定が行われる。印象評価結果はスマートフォンアプリで随時確認でき、歩行姿勢についても推定アニメーションを見ることができる。
会場で行われたデモンストレーションでは、印象評価が大きく4象限に分かれており、歩行姿勢が変化することで結果が変化していく様子が見られた。なお、目標とする歩行姿勢を設定した場合には、装着したイヤホンからコーチング音声が流れ、使用者が理想とする歩き方に近づくよう手助けを行うとのことだ。
京セラの村上エドワード氏は、「長年蓄積された知見を持つワコールのファッションの世界と、京セラが保有するテクノロジーという異分野が融合することで、新たな価値創出を目指していきたい」と語った。