理化学研究所(理研)は10月12日、シリコン量子ドットデバイス中の電子スピンを用いた、2つの離れた量子ビット間の量子接続を実現したと発表した。

同成果は、理研 創発物性科学研究センター 量子機能システム研究グループの野入亮人基礎科学特別研究員、同・武田健太研究員、同・樽茶清悟グループディレクター、同・中島峻上級研究員、理研 量子コンピュータ研究センター 半導体量子情報デバイス研究チームの小林嵩研究員、オランダ・キューテックのアミヤ・サマック研究員、同・ジョルダノ・スカプッチ チームリーダーらの国際共同研究チームによるもの。詳細は、英オンライン科学誌「Nature Communications」に掲載された。

シリコン量子ドット中の電子スピンを用いたシリコン量子コンピュータは、既存産業の集積回路技術と相性が良いことから、量子コンピュータの大規模化に適していると考えられている。ただし量子計算の実行には、量子ビット間の結合(交換結合)の制御が必要であり、大規模化するためには多数の量子ビットを密に並べる必要があった。

しかし、量子ドットの大きさは100nmほどであり、この範囲に量子ビットを精密に制御するための電極配線を作製することや、制御信号のクロストークを避けることは困難なため、量子ビットを疎に配置して大規模化を実装するための長距離接続技術の開発が、大規模化に向けた課題となっていた。

長距離接続を実現するには、離れた量子ビット間での2量子ビット操作が必要とされるが、現時点では、実用的な量子接続に必要な、高い精度での2量子ビット操作は実現されていないという。そこで研究チームは今回、シリコン3重量子ドット中の離れた2量子ビットにおいて、単一電子スピンシャトルを用いた2量子ビット操作を試みることにしたとする。

量子ドット構造は、シリコンスピン量子コンピュータで一般的に用いられている、歪Si/SiGe量子井戸基板上に微細加工が施されて作製された。3層からなるAl微細ゲート電極に正電圧を加えることによって量子井戸中に電子が電界誘起され、高い自由度で量子ドットの形成・制御が可能となるという。