浜松ホトニクス(浜ホト)は10月12日、光の信号の増倍率を固定するための素子である「セルフバイアスジェネレータ」(SBG)と、電流を電圧に変換するための信号処理回路である「トランスインピーダンスアンプ」(TIA)を1パッケージに内蔵した、16チャンネルの産業用LiDAR向けアバランシェ・フォトダイオード(APD)アレイ「Gain Stabilized(ゲイン スタビライズド) Si APD S16430-01CR」の開発に成功したと発表した。

  • 今回発表された「Gain Stabilized Si APD S16430-01CR」の外見

    今回発表された「Gain Stabilized Si APD S16430-01CR」の外見 (出所:浜ホトWebサイト)

APDアレイは、電圧をかけることで光の信号が増倍されるAPDを1チップ内に複数チャンネル配列した光センサのことで、通常のフォトダイオードと比べ、より微弱な光を高感度に検出し、遠くの物体までの距離を測定できることからLiDAR向けの光センサでは主流となっているという。

ただし温度変化に応じて、光の信号の増倍率を調整する必要があり、同社でもこれまで増倍率を調整するためのマイコンや温度センサ、TIAなどを内蔵して使い易さを考慮したAPDモジュールを開発してきたという。その一方で、LiDARモジュールの低コスト化に向け、マイコンや温度センサを必要としない新コンセプトのAPDアレイの開発にも取り組んできたとする。

今回の取り組みでは、独自の光半導体素子製造技術を応用し、SBGを半導体基板上に高精度、高品質に形成する技術を確立。これにより、SBGをAPDアレイと一体化させ、温度変化にかかわらず光の信号の増倍率を固定することで、マイコンや温度センサが不要となる新型APDアレイの開発に成功したとする。

加えて、信号処理回路のTIAを同一パッケージに内蔵していることから、今回の製品を光センサとして組み込むことで、自動搬送車に搭載するLiDARモジュールの低コスト化を実現できるとしているほか、TIAの設計を工夫することで、出力信号の揺らぎを抑えながらも光パルス幅1nsに追従する応答速度と、従来のTIA内蔵型APDアレイの3倍まで高めることに成功したという。

さらに、誤検出の原因となるクロストークの発生を抑制している点も特徴としている。

主な仕様は以下の通り。

  • 検出素子:Si APD アレイ
  • 受光面サイズ(1素子あたり):0.15mm×0.45mm
  • 素子ピッチ:0.5mm
  • 素子数:16
  • 最大感度波長:840nm
  • TIAゲイン:30kV/A
  • 広域遮断周波数:300MHz
  • 入力換算雑音電流(100MHz時):3.0pA/rtHz
  • クロストーク:-60dB

なお、サンプルの提供開始は2022年10月末を予定しており、販売目標台数は初年度は1万個/月、3年後には5万個/月としている。また、同製品は、10月18日から21日まで幕張メッセで開催される「CEATEC 2022」にて出展される予定で、同社では今後、同製品の拡販を進めるとともに新たな用途開拓も進めていくとしている。

  • 今回の製品の応用イメージ

    今回の製品の応用イメージ (出所:浜ホトプレスリリースPDF)