金沢大学(金沢大)、名古屋大学(名大)、国立極地研究所(極地研)、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の4者は10月12日、衛星リモートセンシングと地上電磁波観測を駆使し、特殊な「孤立陽子オーロラ」の発生に伴い、高度50~80kmの中間圏に、南北方向の大きさが400km以下の局所的な範囲でオゾン量の極端な減少を発見したことを発表した。
同成果は、金沢大 理工研究域 電子情報通信学系の尾﨑光紀准教授、同・八木谷聡教授、名大 宇宙地球環境研究所の塩川和夫教授、同・大塚雄一准教授、極地研の片岡龍峰准教授、JAXA 宇宙科学研究所の中平聡志主任研究開発員に加え、NASA ラングレー研究所、米・ジョンズ・ホプキンス大学応用物理研究所、カナダ・アサバスカ大学、カナダ・アルバータ大学の研究者も参加した国際共同研究チームによるもの。詳細は、英オンライン総合学術誌「Scientific Reports」に掲載された。
上空およそ3万6000kmの静止衛星軌道付近までの地球周辺の宇宙空間を飛び交う「放射線帯電子」は、人工衛星を破壊するほどのエネルギーがある上に、磁力線に沿って大気圏内に降下し、オゾン変動の要因となることが指摘されている。
放射線帯電子が「いつ・どこで」大気変動に影響を与えているかを特定するには、孤立陽子オーロラの以下の2点の特徴が重要とされた。
- 孤立陽子オーロラを発光させる陽子と放射線帯電子は、1Hz以下の周波数で生じる特殊な電磁波によりプラズマが揺さぶられることで地球に向けて降下する
- 通常のオーロラは地磁気の緯度65~75度付近に北極・南極を取り巻くようにベルト状に現れるが、孤立陽子オーロラはその少し低緯度側に、孤立したスポット状・帯状のオーロラとして現れる
こうした背景から研究チームは、1Hz以下の電磁波に伴う孤立陽子オーロラを目印にして、その直下におけるオゾン変動を調べることで、これまでわからなかった放射線帯電子の大気降下によるオゾン変動を定量的に調べられると考察。3機の衛星、国際宇宙ステーション(ISS)、地上の観測装置を動員し、3次元的な観測を行うことにしたという。
今回使用された観測装置は、オーロラを可視光とそれ以外の波長でも観測できるDMSP衛星のSSUSI装置、広い空間範囲でのオゾン計測を可能とするTIMED衛星のSABER装置、軌道上の放射線帯電子を検出できるPOES衛星およびISSのMAXI/RBM装置、そして地上の高感度な電磁界センサだという。