京セラは、鹿児島県霧島市の国分工場に所属する3部門の新たな研究開発施設として「きりしまR&Dセンター」を開設した。同施設の本格稼働の開始に際し、10月3日には開所式が行われた。

  • きりしまR&Dセンター開所式で行われたテープカットの様子

    きりしまR&Dセンター開所式で行われたテープカットの様子

国分工場3部門の研究開発部門が1か所に集結

京セラの鹿児島国分工場は、材料技術の研究を行う「ものづくり研究所」、プロセス技術や設備技術の研究を行う「生産技術部門」、解析評価技術の研究を行う「分析センター」の3部門の拠点があり、同社の情報通信や環境・エネルギー分野における主要拠点となっている。

  • 京セラ鹿児島国分工場

    京セラ鹿児島国分工場

きりしまR&Dセンターは、これら3分野における研究開発体制の強化を目的として開設されたとのことで、2021年1月に建設を開始し、2022年6月に完工。それ以降は順次設備の移転を進め、今般本格稼働開始に至ったとのことだ。同センターでは、各部門の研究機関が連携を強化することで製品・技術開発のスピードアップを図るとともに、製品の立ち上げから設備の自動化や生産の効率化まで、総合的にサポートできる体制を確立するとしている。

  • 開所式が行われたきりしまR&Dセンター

    開所式が行われたきりしまR&Dセンター

また、地域のスタートアップや社外の技術者を含めた交流の場としても活用するといい、国分工場内に位置していた3領域の研究開発部門が集まる施設を作ることで、外部との連携を活発にしたとのこと。他社との技術情報の共有や、地域のスタートアップ企業との交流によって、人材育成やイノベーション創出を推進するという。

京セラ代表取締役社長の谷本秀夫氏は、「売り上げは今期2兆円を計画し、中期的には3兆円への成長を目指している」としており、そのためには社内シナジーや外部協業などを通じた新事業創出が不可欠だとする。また、きりしまR&Dセンターについては、「研究開発3部門のシナジー効果によってさらに開発体制を強化し、また事業部門との連携を強めることで、新製品の売り上げに貢献するために設立した」と語った。

  • 京セラ代表取締役社長の谷本秀夫氏

    京セラ代表取締役社長の谷本秀夫氏

活発な交流と柔軟な発想が目指されたオフィス設計

京セラ研究開発本部長の仲川彰一氏は、きりしまR&Dセンターのコンセプトとして「CAMP」を掲げた。これは、同社研究開発部門のモットーであるChange(変革)・Challenge(挑戦)・Create(創造)の頭文字と、同センターに所属する3部門、Analysis(分析センター)・Material(ものづくり研究所)・Process(生産技術精機)の頭文字をとったもので、センター内の設計にもキャンプをイメージしたデザインが施されている。

センター1階部分には、分析センターの研究スペースがあり、ナノオーダーレベルでの研究開発を行っている。分析センターでの検査は振動を嫌うため1階に配置されたとのことで、室内は仕切りが少なく広さを感じる設計となっている。

  • 1階の分析センター研究スペース

    1階の分析センター研究スペース

2階の執務室は、画一的な配置ではなく曲線的な導線になるよう設計され、座る位置によって光景が変わるよう、異なる配置やさまざまな家具を設置しているとのことだ。また、壁が少なく開放的な雰囲気にすることで、活発なコミュニケーションが生まれることを期待しているという。

  • 2階の執務室はフリーアドレス制で、会議スペースやソファも設置されている。担当者によると、すべての家具に意味を持たせているという

    2階の執務室はフリーアドレス制で、会議スペースやソファも設置されている。担当者によると、すべての家具に意味を持たせているという

同じく2階にはカフェテリアスペースが広がり、コンセプトであるキャンプがイメージされたデザインとなっている。「グループと個人がつながれる場所」として、コミュニケーションをとりやすい空間設計が目指されているといい、また一部座席では電源タップも利用可能だ。

  • カフェテリアはキャンプ場のロッジをイメージしたデザインで、執務を行うこともできるという

    カフェテリアはキャンプ場のロッジをイメージしたデザインで、執務を行うこともできるという

また外部との交流にもつながる施設として、会議室やプレゼンテーションルームが設置されている。会議室は「すすき」などの植物の名前や「ほしあかり」などキャンプを連想させる名前がついており、それぞれデザインにも意匠が凝らされているとのことで、より柔軟なコミュニケーションが生まれる場を目指しているとしている。

  • 畳が敷かれた会議室「すすき」

    畳が敷かれた会議室「すすき」

  • 会議室の窓からは桜島を望む

    大型会議室の窓からは桜島を望む

また研究スペースのある3階と4階には、社員同士がリラックスして過ごせる交流ラウンジを設置。クッションが並ぶ小上がりなど、くつろぎが目指されている。

  • 山の頂上をイメージした4階の交流ラウンジ「いただき」

    山の頂上をイメージした4階の交流ラウンジ「いただき」

  • 靴を脱いでくつろぐことができる3階交流ラウンジ「ほとり」

    靴を脱いでくつろぐことができる3階交流ラウンジ「ほとり」

部門を超えた日々の交流がより価値を高める

仲川氏は、きりしまR&Dセンターで期待されることについて、「材料開発や分析、プロセスに携わる社員が、開発段階から連携することに大きなメリットがあると考えている」とし、「日々の会話の中で交流することで、より価値を高められる」と語った。

また谷本氏は、霧島市に施設を持つ強みとして「日本の南側に位置する中で、高速道路が近いなど交通の便がいい」ことを挙げた。また行政との関係についても「これだけ大きな規模の施設を持っていることもあり、非常に良好な関係が築けている」と語った。

  • 記者からの質疑に応える谷本氏と仲川氏

    記者からの質疑に応える谷本氏と仲川氏