大日本印刷(以下、DNP)は10月7日、フランス国立図書館(以下、BnF)のリシュリュー館に開設されたミュージアムに、鑑賞システム「DNPコンテンツインタラクティブシステム みどころビューア」を設置し公開したことを発表した。
1721年に創設されたリシュリュー館は、パリのオペラ座から徒歩15分ほどの場所に位置する。創設以来初となる12年間の全館改修を行う「リシュリュー・ルネサンス・プロジェクト」を経て、ヨーロッパ文化遺産の日にあたる2022年9月17日に「開かれた図書館」として、館内にミュージアムを開設した。
DNPとBnFは2015年から、BnFの地図部門が収蔵する地球儀や天球儀のコレクションのうち特に貴重な55点を3Dデジタルデータ化し、その普及に取り組んできた。2019年7月には、BnFが所蔵する貴重なコレクションと歴史的空間の3Dデジタル化、および、その活用と普及を共同で推進するための契約を締結している。
このような両者の取り組みの一環として、DNPはさざまな質感と形状を持つ立体作品や、歴史的空間を3Dデジタルデータ化して細部までさまざまな角度や切り口から鑑賞できる、コンテンツインタラクティブシステム「みどころビューア」の開発に至ったとのことだ。 DNPとしては、今回のプロジェクトを通じて獲得した技術やノウハウをもとに、美術館や博物館や図書館などの、いわゆるMLA(Museum、Library、Archivesの各頭文字を取ったもの)や企業のショールームの利用者、学校教師、学生、生徒などに向けて、ITを活用した新たな文化体験の提供を目指すとしている。
DNPの専務執行役員でマーケティング本部を担当する北島元治氏は「文化財は人々に感動を与え人生を豊かにする力があると考えている。文化財を保存するだけでなく、人々が触れられる機会を創出することで、価値が創出され、次世代に継承されていくはず。DNPが長年培ってきた印刷技術や情報技術によって実現した、MLAが所蔵するコンテンツを高品質にデジタル化するこのソリューションによって、利用者に感動や知識を提供できる新しい文化体験を提供していきたい」とコメントを寄せた。
リシュリュー館に設置されているみどころビューアの例の一つが、「マザラン・ギャラリー(Galerie Mazarine)」だ。この作品は17世紀バロック様式の天井画として歴史的な空間だ。画家のジョヴァンニ・フランチェスコ・ロマネッリとその工房が、詩人オウィディウスの『変身物語』に由来するギリシア・ローマ神話の一連の物語を描いている。
ここでのみどころビューアは55インチタッチパネルディスプレイを備え、普段は近づいて見るのが難しい、9メートルの高さにある巨大な天井画をさまざまな角度や大きさで鑑賞できる。さらに、天井画に描かれた神話の場面の解説や、修復箇所などの「みどころ」も閲覧可能だ。
もう一つの例は「ルイ15世の間」である。ルイ15世の間は18世紀に作られた王室コレクションの収集室がその起源とのこと。室内には調度品や研究用テーブルが設置されているほか、フランソワ・ブーシェらが描いたギリシャ神話に登場する女神たちの絵画などを所蔵する。
ここのみどころビューアでは、24インチタッチパネルディスプレイを使用する3Dビューアで、部屋の立体的な構造を見ながら絵画や調度品の詳細を閲覧できる。修復前後の作品の様子などを確認できるのだという。
Photo : (c)DNP Dai Nippon Printing Co., Ltd. 2022, - with the courtesy of the Bibliothèque nationale de France