ソフトバンク、京都大学、金沢工業大学の3者は10月7日、情報通信研究機構(NICT)の「Beyond 5G研究開発促進事業」における令和3年度新規委託研究の公募(第1回)で採択され、共同開発を進めていた「完全ワイヤレス社会実現を目指したワイヤレス電力伝送の高周波化および通信との融合技術」に関して、ミリ波の通信装置にワイヤレス電力伝送の機能を実装したシステムの開発と実験に成功したと発表した。
5G(第5世代移動通信システム)の整備による、膨大な通信トラフィックを処理できるネットワーク・インフラの構築では、IoTデバイスやセンサーのバッテリー交換や給電方法が課題になっているという。
給電のワイヤレス化が重要なテーマだが、他の通信システムとの干渉を抑えるために、ワイヤレス電力伝送の出力電力や送電装置の設置場所などは大きく制限を受ける可能性があるとのこと。
このような背景を踏まえて3者は、周波数の逼迫が少ないというミリ波通信帯域でのワイヤレス電力伝送の実現を目指し、ミリ波の通信装置にワイヤレス電力伝送の機能を実装したシステムを開発したとしている。
このシステムは、ミリ波の通信とワイヤレス電力伝送が同一のアンテナを共用し、アンテナのビーム・フォーミング機能を活用することで、ミリ波の周波数帯域を通信とワイヤレス電力伝送で時間と空間ごとに使い分け可能にしたものとのこと。
このシステムから、金沢工業大学が開発した高いレベルの受電効率を持つという受電レクテナ(電波を電気エネルギーに変換する機能を搭載したアンテナ)へ送電する実験を実施し、電気エネルギーが取得できたことを確認したという。
これにより、通信の需要が少ない時間帯に通信基地局のリソースをワイヤレス電力伝送に割り当てることで、基地局や周波数を有効利用できるとしている。
また、通信エリア内のIoTデバイスやセンサーへの無線給電が可能になることで、新たな産業の開拓や発展の可能性が広がるという。
3者は今後、より高効率かつ簡易な送電アンテナのシステムの構築や、受電レクテナの多素子化による受電性能の向上、屋外フィールド試験などによる技術の有効性や商用利用の可能性の実証など、研究開発を進めていく予定だ。