東京大学(東大)と科学技術振興機構(JST)は10月5日、静止した欠陥への蛍光色素の集積現象を運動観察に応用できることを見出し、「トポロジカル欠陥」の動きを3次元で観察することに成功したと発表した。

同成果は、東大大学院 理学系研究科の図司陽平大学院生、同・竹内一将准教授らの研究チームによるもの。詳細は、米科学雑誌「米科学アカデミー紀要(PNAS)」に掲載された。

「ネマチック液晶」は細長い分子で構成され、分子の向きを互いに揃える配向秩序を持つことが知られているが、系全体で必ず分子の向きが揃うわけではなく、配向の整合しない特殊な領域が現れることがあり、これがトポロジカル欠陥と呼ばれている。

2次元の場合のトポロジカル欠陥は、同欠陥の周囲で配向が1/2回転(180度回転)しており、回転方向に応じて「+1/2欠陥」、「-1/2欠陥」と呼ばれる。同欠陥同士は、液晶弾性を通じて相互作用し運動する。

また3次元の場合には、ひも状のトポロジカル欠陥の「線欠陥」がよく見られる。同欠陥の断面では、2次元欠陥の場合と同様に、配向が180度回転しているが、回転軸はどちらを向いていても問題ない。同欠陥は変形を伴って運動し、接してつなぎ替わったり(再結合)、ループ状になってそのまま縮んで消えてしまったりもする。同欠陥の性質や運動は、欠陥の持つ特性を応用する観点からも盛んに研究され、液晶研究における一大トピックとなっているという。

ちなみに現在の技術では、欠陥そのものではなく配向の3次元分布を観測する手法が用いられているという。原理的には配向から線欠陥の位置を特定することは可能だが、実際には欠陥周囲のイメージングにはさまざまな困難が伴い、欠陥位置を3次元的に特定することは容易ではないためだという。

そこで研究チームは今回、静止した欠陥への蛍光色素の集積現象を運動観察に応用し、蛍光色素をトポロジカル欠陥のラベルとして利用することで、その3次元運動を共焦点顕微鏡で直接観測することを試みることにしたという。