ヤフーは10月5日、飲食店や小売店などの施設の時間帯・曜日別の推計来訪者数や、性別・年代の傾向、来訪元の市区町村などを分析でき、プロモーション・販促等に活用できる新機能「施設来訪者分析」の提供を年内に開始すると発表した。
同社は、同社が提供するサービスから得られるビッグデータを活用し、企業や自治体向けに事業の創造や成長支援、課題解決などにつなげるインサイトを提供することを目的として、2019年から事業者向けデータソリューションサービスを提供している。
データソリューションサービスには、検索データや位置情報を中心としたYahoo! JAPANのビッグデータをもとにブラウザー上で調査・分析できる「DS.INSIGHT」、統計データを自社の分析環境やシステムでダイレクトに組み込んで利用できる「DS.API」や「DS.DATASET」、個々の企業や自治体の要望に応じてオーダーメードの課題解決を行う「DS.ANALYSIS」がある。
「施設来訪者分析」は「DS.INSIGHT」の人流データ分析ツール「DS.INSIGHT Place」内の新機能として提供するもので、Yahoo! Japanアプリの1000万人以上の利用者の位置情報を取得元データとしている。ユーザーは、調べたい店舗・施設名を入力するだけで、その店舗の時間・曜日別の推計来訪者数や、性・年代別の傾向、来訪元の市区町村(町丁)、他に訪れる傾向がある店舗などの分析が可能。対象の店舗・施設名は80万カ所あるという。(来訪者数が少なく、データ分析できるデータ量がない場合は対象外となる。また、データ精度はGPSの精度に依存するため、近い店舗だと分析できない場合もある)。
「施設来訪者分析」では、「商圏エリア」、「店舗外行動」、「来店推移」、「来店頻度」の4つの切り口で可視化ができる。
「商圏エリア」では、指定した店舗・施設へ来訪した人々の居住エリア がランキングでわかり、「店舗外行動」では、指定した店舗・施設に来訪しているユーザーが他に訪れている店舗・施設がランキングで表示される。店舗間や観光スポットでの動線が明らかになり、ターゲットの行動パターンがわかるという。
「来店推移」は、指定した店舗・施設の来訪者数と性年代が1時間、1日単位で見られ、「来店頻度」では、指定した店舗・施設への来店リピート率が年代別、性別別に表示できる。
同社では、これらの機能を利用することで、POSデータだけではわからない来訪者数・属性を可視化や来訪者のリピート数、住居エリアの分析、自社では取得できない競合他社や他業界の来訪者情報把握などに活用できるとしている。
ヤフー データソリューション事業本部長 村田剛氏は、「今回提供する『施設来訪者分析』は基本機能で、今後はユーザーの声を聞きながら機能を追加し、独自性を出していく」と述べた。
「人口統計データ」を「DS.DATASET」の新機能として提供
また同社は、膨大なビッグデータを分析しやすいようにテーマ単位に加工・集計したデータセットである「人口統計データ」を「DS.DATASET」の新機能として提供開始することも発表した。
「人口統計データ」では、任意の指定エリアの滞在人口や性別・年代傾向や、来訪者の来訪元、指定エリアからの移動先の市区町村(町丁)、エリア滞在者の検索傾向などのデータセットを、ニーズに応じて提供する。特定テーマごと にデータを抽出。 類義語や表記揺れも対応し、前処理の工数削減データ可視化ツールをはじめとする可視化・分析ツールに利用可能だという。
「人口統計データ」は、特定エリアにおける住民、もしくは来訪者の人流を知ることで、観光施策や施策効果測定、交通整備など、スマートシティ推進のための情報を可視化するほか、立地評価に関する参考データとしての活用できる。また、アカデミックをはじめとする研究用にデータを利用可能だという。
「人口統計データ」は、月額50万円より提供する。
ソリューションパートナープログラムも開始
さらに同社は同日、ソリューションパートナープログラムを開始したことも発表した。これは、データソリューションサービスを活用し、顧客へ各種ソリューション提供を検討する企業向けのビジネス・マーケティング支援の無償プログラム。
ヤフーのデータを活用するためのセミナーやトレーニングプログラムが受講できるほか、パートナーの商用サービスにヤフーのビッグデータを活用できる。また、ヤフーが持つ 100以上の特許 の一部をパートナー向けに提供するという。
今回の「施設来訪者分析」は、ヤフー内のデータのみを活用している。しかし、同社のグループ企業には、LINE、PayPay、ソフトバンク携帯など、豊富なデータを持っている企業もある。これらのデータを活用していくことはしないのかという質問に、ヤフー 執行役員 CDO(Chief Data Officer)谷口博基氏は、「(グループである)Zホールディングとしてデータを活用していくことは、シナジー効果もあるのでその方向でいきたいと考えているが、各社のデータは各社のお客様とのお約束のもとで活用しているので、しっかり同意をいただいたのち、使っていけるようになればいいと思っている。そのため、理解を得るための準備を進めている」と、グループ内データも活用していく方向であると語った。
その上で同氏は、データソリューションビジネスの売上で100億円を目指したいとした。ただ、達成の目標時期については未定とした。