多数のファブレスIC企業が、TSMCから2023年1月1日以降に出荷する製品の受託生産価格を3~6%引き上げるとの通知を受け取り、そのうち6~7割の顧客がそれに同意した模様だと台湾の「經濟日報」が10月3日付で報じている。
市場からは、TSMCの大口顧客であるAppleやNVIDIAが値上げを拒否し、台湾大手のMediaTekも拒否する方向との観測が出ているが、そこまで大口ではない顧客は、今回の値上げを拒否すれば、半導体景気が回復した時に在庫が不足し、供給できなくなることを懸念して受け入れた模様だという。ある中小ファブレスIC企業の幹部は、Appleのような大口顧客はTSMCと対等に価格交渉できるが、大半のファブレスは、おとなしく従わざるを得ないと述べているという。
値上げ幅については、ファブレスIC会社からの話によると、2023年1月出荷分から8インチウェハで6%値上げ、12インチウェハで3~5%ほどの値上げとTSMCから通知を受けたという。半導体のリードタイムは3カ月以上かかるため、少なくともTSMCがこれから生産を開始する製品には新価格が適用されることになる模様である。
28nm以上の成熟プロセスの価格は、他のファウンドリが値上げした際も、TSMCはそれほど引き上げなかったこともあり、UMCなど他のファウンドリの方がTSMCより製造受託価格が高い状況になっていたという。それが、今回の値上げにより、TSMCの価格が同業他社より高い従来の状態に戻ると見られるという。
なお、TSMC関係者によると、7nmプロセス用製造装置の減価償却が徐々に完了し、輸出に有利な為替レートと製造受託価格上昇とが相まって、TSMCの売上高や利益は2023年も成長傾向が続く見通しだという。