ベネッセコーポレーションは10月4日、オンラインで記者説明会を開き、小・中学生の学習意欲を応援する「勉強が好きなキミ、はじまる」を同月からスタートし、その第1弾としてVR((Virtual Reality)ゴーグルで学ぶ新しい学習法「ハイリコム学習」を、小学校6年生向けの「進研ゼミ中学準備講座」で提供を開始すると明らかにした。
VRゴーグルを利用した学習
新サービスについて、ベネッセコーポレーション 校外学習カンパニー 副カンパニー長の成島由美氏は「新しい映像業技術や教具を用いて、紙や二次元写真では難しい重要単元の理解度、学習意欲の向上に挑戦したいと考えた。直近の課題を受けて、進研ゼミではやる気を引き出すサービスへの進化に注力する」と力を込めた。
東京大学と同社の共同研究プロジェクトの調査では、新型コロナウイルス感染拡大に伴う学校生活や学習習慣の乱れにより、「勉強のやる気がわかない」と答える小・中学生が3年連続で増加し続けているほか、学習意欲の低下した子どもたちのやる気向上には、学習の中で「わかるようになった」「楽しくなった」「深く考えるようになった」という経験が重要だと判明したという。
調査結果をふまえ、進研ゼミでは、小・中学生(11歳以上対象)の学習専用に独自に開発した「VR study ゴーグル」を使いながら学習する「ハイリコム学習」をスタートする。
まずは、小学6年生向けの進研ゼミ中学準備講座で新しい学習法を提供し、中学校で学習内容が難しくなる「宇宙」や「英文法」など、実際には見えない抽象的な単元や難しいルールなどをVRコンテンツで学習する。
例えば、下図のように天体は小学生では自分(地球)中心の観察による学習で理解していたが、中学生では視点を変えて理解する必要がある学習が増加する。そのため、VRゴーグルで視点を変えてシミュレーションできることから、つまずきやすい概念理解の助けになるという。
なお、VR study ゴーグルは小児眼科など専門家の指導のもと独自開発し、受講費内(月額5830円)で提供するため、追加の費用は発生しない。
ベネッセの教育DX戦略
説明会では、ベネッセホールディングス 専務執行役員CDXO兼Digital Innovation Partners 本部長の橋本英知氏が同社における教育DX(デジタルトランスフォーメーション)戦略と今後の教育事業の注力ポイントについて、語られた。
今後5~10年で教育事業を取り巻く環境として、子育てや学ぶでは少子化による入試競争率が低下し、目標・競争の概念の喪失が見込まれることから、将来を生き抜く学びが重要になることに加え、グローバル環境下で通用する人材教育、デジタル・IT活用の加速、所得・地域格差が教育格差を拡げる可能性があると指摘。
一方、大学・社会人においては独自の強みが出せない大学の淘汰や大学の評価が入試から卒業後の進路に変化し、社会人も自ら学び続ける力が重要になるという。そのため、橋本氏は学力・学習意欲に合わせた個別の対応や多様な学びの支援の実現が必要だとの認識だ。
同社では大学・社会人向けにオンライン動画学習サービス「Udemy Business」、高校生100万人以上に導入した教育プラットフォーム「Classi」、小・中学校9000校への導入があるタブレット学習ソフト「ミライシード」、1万校以上に導入した学校支援システム「EDUCOM」などのデジタルサービスを提供しており、小学生・中学生へのタブレット出荷は累計500万台以上に達している。
橋本氏は「教育事業のDX戦略は、既存サービスのアセットを活かしてデジタルサービス利用者を一気に拡大する」と意気込む。
その施策としては、(1)デジタルを勝代うしたUX改革による顧客満足度の向上、(2)データ利活用に収益性の向上、(3)圧倒的な規模を活かしたプラットフォームビジネスの展開の3つを掲げている。
一例として、赤ペン先生では紙で郵送する顧客の手間・負担は提出しない要因となっており、返却までに最長2週間を要していた。
そのため、タブレットに切り替えたことで提出期間の大幅な短縮につなげ取り組み状況を保護者がスマートフォンで確認できるようになったほか、答案だけでなくデジタルレッスン正答率や取り組み状況をふまえたアドバイスなどを行った。
結果として、タブレット課員の提出率が2.7倍向上し、添削コストは10%以上減少している。橋本氏は「子どもの学習意欲の低下が新たな社会課題となっている。そのため、当社としては子どものやる気を引き出すことを目的に商品・サービスのDXをさらに推進していく」と述べていた。