デンソーは9月27日、車両周辺の歩行者や自転車を認識し、安全運転支援に貢献する画像センサの検知角度を128度まで広角化することに成功し、2022年4月に発売されたSUBARUの「アウトバック」(北米仕様)の一部グレードに採用されたほか、2023年発売予定の新型「クロストレック」(日本仕様)にも採用が決定したことを発表した。
自車の横方向から飛び出してきた歩行者や自転車などとの交通事故は、日本では全歩行者の交通事故のうちの約3割を占めるといわれている。遊びに夢中になっている状況などが考えられるが、中でも12歳以下の子どもの割合が全体の約7割を占めるという。
特に住宅地などでは建物の死角となることが多いため、走行中のクルマから横方向を見通すことは困難であり、しかも身体の小さな子どもや、スピードの出ている自転車などが横方向から飛び出してきた場合、ドライバーが見落としてしまうことも想定される。また気付けたとしても、対応が間に合わず、飛び出し事故につながってしまうケースもある。
このような状況を受けて、近年、世界の自動車アセスメントプログラムの中でも最も先進的かつ厳しい1つとされる欧州のEuroNCAPにおいては、道路脇などからの飛び出し検知に対する重要性が年々上げられつつある。
そして、こうした自動車アセスメントの厳しい条件に対応するため、近年の新車は、より広角のセンサやカメラを装備することで、運転支援技術を強化する方向が取り入れられるようになってきた。歩行者や自転車をいち早く検知することで衝突被害軽減ブレーキを作動させ、衝突事故を防ぐ、もしくは接触してしまった場合でも極力クルマの速度を落とすことで、歩行者や自転車の受ける被害を最小限にするというものである。
そのため、センサのさらなる広角化が求められるようになっており、デンソーが今回開発した新型センサでは、検知角度128度を実現。これにより低速走行時の横断自転車の検知性能が向上し、EuroNCAPで定められている、自車が時速10kmで走行中のところ、時速20kmで自転車が目の前を横断してくるというシチュエーションに対応できる性能を実現したという。
しかし、この広角化はメリットばかりを得られるわけではない。多くの対象物を検知できるようになるのは事実だが、その一方で、危険につながらない対象物も検知してしまうという確率も高くなる。例えば横断しようとする自転車を検知したものの、自転車がきちんとブレーキをかけて停止したなら、互いに衝突することなく通過できるというシチュエーションが考えてみると、これが衝突の危険性ありとして衝突被害軽減ブレーキが作動すると、ドライバーやパッセンジャーにとっては急減速や大きな作動音などによる不快が生じるだけでなく、予想外の車両の動きにより別の危険(後続車両の追突など)が発生する可能性も生じてしまうことも考えられる。
そこでデンソーではAI技術を活用し、広角で早期に対象物を検知するとともに、時系列での動きの推定などを併用して実際に危険に至るかを見極めることにしたという。クルマに不要な動作が発生するのを抑制することで、センサの広角化によるメリットと実用性の両立を実現できたとしている。
なおデンソーでは、今後もすべてのクルマに安心・安全を普及させることを目指し、ユーザーに喜ばれる安全製品の開発を進めていくとしている。