半導体市場調査会社TrendForceによると、NAND市場は供給過剰に陥っており、買い手は2022年後半現在、在庫削減を優先し新規購入を抑制している一方で、売り手は販売促進のために値下げを進めており、結果として2022年第3四半期のNANDウェハ価格は前四半期比で30~35%下落したという。第4四半期も、最終セット製品の販売低迷により、在庫が増していることから、NAND価格はさらに同15~20%ほど下落すると予想されるという。

TrendForceでは、急激な価格下落により、2022年末までにほとんどのメーカーのNAND製品について、損失の領域に突入すると予想。結果としてサプライヤ各社は、損失削減手法して生産量を削減する可能性があると指摘している。

  • NANDの2022年第3四半期(推定)と第4四半期(予測)の前四半期比価格下落率

    NANDの2022年第3四半期(推定)と第4四半期(予測)の前四半期比価格下落率 (出所:TrendForce、2022年9月)

各分野別に見ると、2022年下半期のクライアントSSD市場は、PC各社ともに2023年の需要に関して悲観的で、在庫削減を最優先としているため、サプライヤは価格の柔軟性を高める形で出荷を行っている。そうした中、PCIe 4.0品の出荷の伸びを受け、サプライヤ各社はQLCの176層品の供給を増加させつつ、2四半期連結型の価格交渉戦略の採用により、512GB品の供給量を増やした結果、価格競争が激化しており、2022年第4四半期のクライアントSSDの価格は前四半期比で15~20%減となると予想されるという。

エンタープライズSSDは、サーバ出荷量が第4四半期に減少する見通しから購入量も減少しているが、それ以上にクライアントSSDの需要落ち込みを受け、シェア獲得の意味もあり176層をはじめとする高層製品の提供を開始。SK Hynixの子会社Solidigm(旧Intel NAND事業部門)も128層品をリリースしたほか、キオクシアはPCIe 4.0品の販売増に向け、北米のクラウドサービスプロバイダとの提携を強化している。提供製品が増えれば、価格競争は激化する見込みであり、結果として同四半期のエンタープライズSSD価格は、同15~20%減となると予想している。

eMMCは、ChromebookとTV需要の低迷から、調達量が増える見通しは立っていない。消費者の購買意欲が低下する一方、供給と生産量は持続的に増加しているため、在庫低減に向けサプライヤ各社は2022年第3四半期に低価格を提示する必要が生じたが、買い手側の注文は、複数バッチに分け、少量を調達するという傾向となっており、第4四半期も価格は下落し続け、eMMC価格は同13~18%減と予想されるという。

UFSは、スマートフォン(スマホ)市場の低迷から、本来の繁忙期である2022年第3四半期の販売実績が低迷。第4四半期も高い在庫レベルから、新規調達意欲は低く、サプライヤ各社は低価格戦略を維持しているという。そのためサプライヤ各社は、さらなる値下げを続けており、同四半期のUFS価格は同13~18%減となると予想されるという。

NANDウェハは、数四半期にわたる在庫調整が続いているが、市場の在庫に対する態度は消極的なままで、特に消費者向けのSSD、メモリカード、ドライブなどの製品需要が停滞しており、ウェハ価格を支える力になれていない。一方のサプライヤ各社は、価格の下落傾向が避けられないため、コスト構造の最適化に向けた先端プロセスへの移行を加速させつつ、ウェハ供給量を増やしており、そのためウェハの契約価格は製造コストレベルまで下がる勢いだという。