東レは9月21日、シンガポール科学技術研究庁「A*STAR」の先端的半導体研究機関「Institute of Microelectronics(IME)」と、SiCパワー半導体向け高放熱接着材料の実用化に向けた共同研究を開始したことを発表した。
また、今回の研究を円滑に進めるため、シンガポールに6月に開所した「東レシンガポール研究センター(TSRC)」からの支援を実施することも併せて発表された。
SiCは従来のSiと比べ耐熱性に優れているため、発生した熱を効率よく放熱することで性能向上につながることが期待されているが、一般的なグリースやハンダを用いる放熱接着部材では、冷却器との接触熱抵抗が高く十分に冷却できないため、半導体が故障するという課題があるという。
そうした中でこれまで東レは、ポリイミド系耐熱樹脂に独自の分子設計技術を駆使したエレクトロコーティング剤の「Semicofine」や「Photoneece」、半導体・電子部品向け接着シートの「FALDA」を開発し、それらの高い信頼性を背景に半導体や電子部品、ディスプレイ向けに広く採用されているという。
2016年からは、IMEの先端半導体パッケージに関する国際コンソーシアムに複数参画しており、FALDAのラインナップである高放熱接着シートを用いた新規冷却型SiCパワー半導体モジュールの開発を共同で進めるなど、連携を深化させてきたという。
こうした共同研究の成果として、接触熱抵抗が低い放熱接着シートを用いた新規SiCパワー半導体モジュールの試作に今回成功したとしており、これにより冷却できないことでSiCパワー半導体が故障するという課題が解決され、高温での耐久性試験にて高い駆動が確認されたとしている。
なお、今回の共同研究では、IMEの設計・試作・評価技術と、東レの材料・プロセス技術を融合させることで、半導体の安全性や品質・信頼性に寄与する、高放熱接着材料の貼付けプロセスの簡便性と信頼性の向上に取り組むとしており、今後、デバイスの試作・評価を進め、2025年の実用化を目指すという。