AVITAとローソンは9月22日、時間・場所・年齢・性別・さまざまな障害に制約されない新たな働き方や、 アフターコロナにおけるリアル店舗での非接触の新しい接客の実現に向けて、協業を開始した。
アバター活用の協業第1弾として、2022年11月末に都内にオープン予定の未来型店舗「グリーンローソン」にAVITAのアバター接客サービス「AVACOM」を導入する。
同店舗では、アバターを活用した顧客の困り事へのサポートや新商品の説明、VTuberとのコラボレーションによるエンターテインメントの提供など、新しいコミュニケーションの実現を目指す。
同日より、「グリーンローソン」のアバターワーカーを公募する。10~30名の採用を予定しており、合格者は指定の研修を受講した後、11月末から「グリーンローソン」で働く予定。
「グリーンローソン」での検証を行った上で、2023年度中に東京・大阪のローソン10店舗で勤務する、ローソンが認定するアバターワーカー「ローソンアバターオペレーター」50名を育成する。さらには、2025年度中に全国各地のローソン店舗で活躍する「ローソンアバターオペレーター」1,000名の育成を目指す。
プライバシーにまつわる情報もアバターなら話しやすい
AVITAの代表取締役CEOの石黒浩氏は、日本のロボット研究の第1人者であり、大阪大学教授、国際電気通信基礎技術研究所石黒浩特別研究所所長[2]、国立情報学研究所客員教授を務める。
石黒氏は、アバターによって「仮想化実世界」を作り上げたいと述べた。「実世界では経済活動によって利益を得ているが、失敗すると取り返しがつかない。しかし、仮想世界では複数の世界に身を置くことができ、1つの世界で失敗しても別な世界で出直せる。このように、実世界と仮想世界の長所を兼ね備えた“仮想化実世界”を作り出したい」(同氏)
仮想化実世界の実現においては、ロボットやCGエージェントの技術が必要だが、これらは日本が得意なジャンルだという。石黒氏は「これまで培ってきた研究成果を生かして、世界を変えていく。まずは、普及させやすいCGアバターから手掛ける。CGアバターを使って市場を開拓し、付加価値の高いところをロボットに置き換えていきたい」と語った。
石黒氏は「アバターは大抵の対話サービスで活用できる」と述べた上で、プライバシーにまつわる情報を提供する必要があるという対話サービスの特性にアバターは適していると説明した。
生身の人間には話しづらいプライバシーに関わるセンシティブな情報もアバターになら話せてしまうというわけだ。「プライバシーに関する情報を開示すると、よいサービスを受けられる」と、石黒氏は話していた。
アバターで社会課題を解決し、街のプラットフォーム目指す
一方、ローソン 代表取締役 社長の竹増貞信氏は、「われわれは、“あたたかいロボティクス”“デジタル化を進めていきたい”と常々考えてきた。AVITAのコンセプトはわれわれがやりたいこと、そのものだった」と語った。
ローソンは今年から、「地域密着×個客・個店主義」を戦略として掲げているが、竹増氏は「平準化では成長が望めない。全店舗で共通のベース部分に各店舗で違う部分を創造していくことが必要と考えている。また、当社はこれまで生活インフラとして成長してきたが、生活インフラだけでは社会課題を解決できない これからは生活プラットフォームに変革していく」と説明した。
竹増氏は、少子高齢化による労働人口減少、地域社会の空洞化、多様な働き方への対応、複数店舗の経理効率化といった社会課題をアバターにより解決できるのではないかと訴えた。「アバターを使えば、時間と場所を選ばず、自由に働ける。やりたいこと、願っていることが、アバター活用により解決される」(同氏)
ローソンでは、アバターワーカーとして、育児中の人、シニア、障がい者、海外居住者をターゲットとしており、高スキル保持者は複数店舗勤務も可能になるという。
ローソンのアバターワーカーはまずは、未来型店舗「グリーンローソン」で働くことが決まっている。「グリーンローソンでは、「人への優しさ」「圧倒的な美味しさ」「地球(マチ)への優しさ」という未来のための3つの約束を実現することを標榜している。
説明会では、グリーンローソンで活動するアバターワーカーの「そらと」さんが司会を行っていた。この「そらと」さんは、淡路島からリモートで操作している様子も披露された。