アリババクラウドは9月22日(タイ 現地時間)、バンコクで開催中の「アリババクラウドサミット2022」において、新たなグローバル戦略のロードマップを発表した。以下にその具体的な取り組みをいくつか紹介する。

  • アリババクラウドサミット2022の様子

    アリババクラウドサミット2022の様子、画像の人物はアリババクラウド・インテリジェンスの国際ビジネス担当プレジデント セリーナ・ユアン(Selina Yuan)氏

クラウド利用を加速する複数の新ソリューション

アリババクラウドは幅広いクラウドサービスを顧客企業に提供することを目的として、次の複数の新ソリューションの提供開始を発表した。

ネットワークサービス「Cloud Enterprise Network 2.0」は、企業のグローバル展開をサポートするためのグローバル・インテリジェント・ネットワーキングを提供する。同サービスは大規模なネットワーク機能をサポートしており、従来バージョンと比較して、可用性の高さと低レイテンシー、セキュリティ機能に加えて、企業向けの柔軟な価格設定オプションを特徴としている。

ブロックストレージと企業向けの自動スケーリング機能を備えた「ESSD Auto PL」は、突発的なトラフィック急増時に数秒以内に自動で拡張する自動スケーリング機能を備え、最大100万IOPSに対応するという。

「Lindorm」は、ワイドテーブル、時系列、時空間、および非構造化データの融合処理要件に対応するように設計されたクラウドネイティブなマルチモデル・データベースだ。

コンテナ管理プラットフォーム「ACK One(Alibaba Cloud Distributed Cloud Container Platform)」は、パブリッククラウドまたはプライベートクラウド、オンプレミスなど環境にかかわらず統一されたプラットフォームを通じて、コンテナクラスタ管理、リソース・スケジューリング、データの災害復旧、アプリケーション配信を支援する。

そのほか、中国市場での事業運営を目指す多国籍企業向けに設計した「アリババクラウド クラウドボックス」も発表した。同サービスは、コンピュートやストレージ、ネットワークといったクラウドプロバイダーのパブリッククラウド・インフラストラクチャ技術を統合することで、顧客企業の事業所の近くで展開できるフルマネージド・クラウドサービスを提供する。

パートナーエコシステム強化に向けて10憶米ドルを投資

アリババクラウドはエコシステム戦略を刷新し、パートナーの技術革新と市場拡大の支援を目的として、今後3会計年度において10億米ドルの投資を行うことを発表した。その内訳は資金調達、リベート、GTM(Go-to-Market)イニシアチブなどだ。

また、同社はパートナーの成長を加速させるために、「リージョナル・アクセラレーター(Regional Accelerator)」プログラムを立ち上げた。このプログラムは異なる市場で活動するパートナーに対し、現地向けに調整したビジネス・コラボレーション・モデルを提供する。モデルは市場の技術的成熟度や業種別フォーカス、デジタル化ニーズ、ビジネス需要などの要素によって設計し、パートナーの収入向上と技術的専門知識の強化を支援する。

同社はさらに、パートナーの国際ビジネス・オペレーションを簡素化するため、ISV(独立系ソフトウェアベンダー)パートナーとのコラボレーションモデルを拡充した。金融サービス、小売、インターネット、製造業などの業務向けのISVをパートナーとして迎え、製品の共同開発や顧客のイノベーションのサポートに取り組むとのことだ。

  • アリババクラウドは今後3会計年度で10億米ドルの投資を約束した

    アリババクラウドは今後3会計年度で10億米ドルの投資を約束した

世界各地でクラウド導入を支えるカスタマーセンター設立

アリババクラウドは総合的なクラウドベースのソリューションの提供に向けて、顧客企業のクラウド導入プロセスを強化するプログラム「Global Delivery and Service Program」を開始した。

このプログラムでは、クアラルンプール(マレーシア)、ポルト(ポルトガル)、メキシコシティ(メキシコ)の3カ所にカスタマーサービスセンターを開設し、顧客企業のクラウド導入をサポートするとともに、地域ごとに適切なクラウド移行サービスやコンサルティング・サービスを提供する。

カスタマーサービスセンターに加えて、クアラルンプール(マレーシア)、ドバイ(アラブ首長国連邦)、香港(中華圏)にはサービスデリバリーセンターを設置し、アジア太平洋地域と中東、欧州、アフリカにおける地域オフィスと、顧客のプロジェクトデリバリーに対する技術サポートを強化する。

クラウドを基盤に企業間コラボレーションも推進

さらに、アリババクラウドは日本のゲーム開発スタジオであるJP GAMES協力し、メタバース空間への進出を見据えるグローバル企業向けに、仮想空間とリアルなアバターを作成する一連の新サービスも提供する。

タイのメタバース企業であるMetaverseXRとは、タイ市場向けに包括的なメタバース・ソリューションの提供を開始する。Web3に対する現地の需要に対応する考えだ。

また、ミャンマーのUMG Groupとの提携では、特にミャンマーの伝統的な産業に対してデジタル変革を後押しするという。

シンガポールのBeLive、およびVisionTechとは、メディアとフィンテックの分野で地域的なアウトリーチを拡大している。

そのほか、ニュージーランドに拠点を置くブロックチェーン・インフラストラクチャを手掛けるOnFinalityと協力して、グローバル展開を目指すWeb3開発者向けに、堅牢なクラウドコンピューティング機能とグローバルネットワークを提供する。