新型コロナウイルスに感染して亡くなった20歳未満の男女の約半分は基礎疾患を持っていなかったことが国立感染症研究所(感染研)の分析で明らかになった。これまで基礎疾患があると子どもの重症化リスクが高いとみられていたが、今年1月にオミクロン株が広がった後は基礎疾患がなくても新型コロナに感染すると死に至る恐れがあることを初めて示したデータだ。
感染研の実地疫学研究センターと感染症疫学センターは日本小児科学会、日本救急医学会などの関係学会と協力して、今年1~8月にコロナ感染後に死亡したとの報告があった20歳未満の41人を対象に調べた。41人のうち詳しく調査できたのは32人で、このうちコロナ感染が関係したと判断された29人について分析した。亡くなったのは年齢別に0歳が8人(28%)、1~4歳が6人(21%)、5~11歳が12人(41%)、12~19歳が3人(10%)。性別は男性16人(55%)、女性13人(45%)だった。
年齢を問わず重症化と関係するとされる基礎疾患の有無を調べたところ、あった人は14人(48%)、なかった人は15人(52%)で、約半分は基礎疾患を持っていなかった。亡くなった調査対象の基礎疾患の内訳は、中枢神経疾患7人、先天性心疾患2人、染色体異常2人など(重複あり)。
新型コロナワクチン接種については29人のうち接種対象年齢となる5歳以上が15人、対象外年齢が14人。対象年齢の15人を調べたところ、未接種が13人、2回接種が2人で、接種しても命を落とす例があることが明らかになった。接種を受けた2人はいずれも12歳以上で、発症日は、最終接種日から3カ月経過していた。
また、発症から亡くなるまでの日数は、発症日が分かった26人のうち0-2日が8人、3-6日が11人、7日以上が7人で、中央値は4日。73%が1週間未満という短い期間に亡くなっていることも判明。感染研は発症後1週間は特に症状の経過観察が重要だとしている。
このほか、医療機関に来たときの症状は発熱が23人で79%を占め、吐き気やおう吐15人、52%、意識障害13人、45%。このほか咳やけいれんといった症状もそれぞれ30%前後あった(重複あり)。感染研によると基礎疾患のない場合でも意識障害やおう吐、けいれんなどの症状がある場合は特に注意が必要だという。
これらのデータは14日開かれた「厚生労働省に対策を助言する専門家組織(脇田隆字座長)」会合で報告された。感染研所長も務める脇田座長はこの日「20歳未満の人が感染して早期に死亡する例が報告された。ワクチン接種を呼びかけることも重要だと考えている」などと述べた。
20歳未満、中でも10歳未満の感染は感染拡大の第7波で急増し、亡くなる例も報告されるようになった。厚生労働省によると、新型コロナの感染が国内で広がって以来、10歳未満の感染者の数は200万人を大きく超える。オミクロン株が流行する前の昨年末までに亡くなった10歳未満は判明した範囲でいなかった。10歳から20歳未満でも3人だった。しかし同株が流行した今年に入ってから報告例が相次いだ。
専門家によると、ワクチン接種後の副反応は対象年齢の5歳以上の子どもと大人を比べて大きな差はなく、発熱、吐き気、おう吐などが大半。しかしまれに心筋炎などもあるとされる。このため自分の子どもへの接種をためらう保護者は少なくない。
日本小児科学会は3月に「5~11歳小児への新型コロナワクチン接種に対する考え方」を最終改訂し、その中で接種は「意義がある」と慎重な表現を選んでいた。しかし第7波による急激な感染者増に伴って5~17歳の重症化例、死亡例が増えたことから8月10日に「5~17歳の健康な小児へのワクチン接種を推奨する」とより積極的な表現の見解を公表した。
この見解の中で「推奨」する理由として同学会は(1)オミクロン株の流行以降、小児特有の呼吸器症状である「クループ症候群」や熱性けいれんが増加(2)小児に対するワクチン関連の国内外データが集積し、5~11歳の副反応は成人より軽い傾向が確認された(3)世界各国の研究成果が蓄積し、オミクロン株を含めた流行株に対するワクチンの重症化予防効果が40~80%程度認められることが確認された――などを挙げている。
また厚生労働省は、5~11歳の子どもへのワクチン接種について解説する保護者向けパンフレットを作成。接種の効果や安全性、副反応などに関するデータを示すなど、自分の子どもへの接種に対する理解が進むよう努めている。
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