三菱電機と東芝三菱電機産業システム(TMEIC)は9月21日、三菱電機のAI技術「Maisart(マイサート)」を用いて、短時間で熟練設計者による設計と同等性能の設計を実現する産業用モーター設計支援システムを共同開発したと発表した。同システムを2023年度にTMEICでのモーター設計業務に導入される予定だ。

従来、工場設備のポンプやコンプレッサー、ファンなどに用いられる産業用モーターの設計は、サイズを小さくすると電力効率が下がってしまうなど背反関係にある希望性能のバランスを見ながら設計変更を繰り返して設計仕様を調整する必要があった。

今回、両社が開発したシステムでは、AIを活用することで設計仕様を短時間で決定することができる。具体的には、①設計者が入力する希望性能に近い性能を実現する過去の設計仕様とその性能をAIが提示する処理を繰り返すことで、設計者による希望性能の調整と過去の設計仕様選択をAIが支援、②過去の設計仕様に基づき最適な設計仕様候補をAIが提示、という2段階の構成により、設計仕様を決定する。

  • 「AIを用いた産業用モーター設計支援システム」のイメージ

    「AIを用いた産業用モーター設計支援システム」のイメージ

同システムでは、設計者は希望性能をAIへ入力し、AIが提示する過去の設計仕様の性能に基づき希望性能を微調整して再入力するだけで、希望性能に近い過去の設計仕様が得られる。さらに、希望性能に近い過去の設計仕様に基づき、AIが新たに最適な設計仕様候補を提示することで、熟練者の設計手順の容易化・標準化が可能だ。

システムに活用されている技術を発展させることで、設計初心者への技能伝達効率化や設計の性能向上も期待できる。TMEICの設計者が過去の設計仕様に対して同技術を適用したところ、熟練の設計者で従来8時間(初心者で24時間)かかる作業が約3時間へ短縮できることを確認したという。