プラズマ物理学の進歩に貢献した研究者に贈るチャンドラセカール賞の第9回受賞者に、インドのアルナブ・ライ・チョウドゥリ氏が選ばれた。太陽の磁気流体力学的な現象の理論研究で、卓越した成果を挙げてきたことが評価された。アジア太平洋物理学会連合プラズマ物理分科会(菊池満代表理事)が発表した。

太陽の内部を流れる電流により、磁場が起きている。内部から延びる磁力線のアーチ状の束「磁束管」が上昇し、太陽表面に至った部分にN極とS極のペアからなる黒点ができる。チョウドゥリ氏はこの過程をシミュレーションで示した。

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    アルナブ・ライ・チョウドゥリ氏(本人提供)

磁束管が上昇する過程で生じた磁場が、太陽表面から約15万キロまでの対流層の底に運ばれる。磁場はここで、水素やヘリウムの対流との相互作用により、かつて考えられていたよりはるかに強く増幅してため込まれる。これが、太陽の次の活動周期の磁場の源になる。チョウドゥリ氏はこうした仕組みを提唱し、1995年に「磁束輸送ダイナモモデル」の基礎となる論文を発表した。

このモデルを基に2007年、太陽の11年の活動周期のうち2008~19年の「サイクル24」の活動度を予測した。予測通りにこの周期の活動はかなり低調になった。太陽の周期活動の不規則性を理論で示す成果として注目されている。

チョウドゥリ氏は1956年、インド・コルカタ(旧カルカッタ)生まれ。85年、米シカゴ大学大学院で博士号を取得した。87年からインド科学研究所の教員を務め、今年7月まで教授職にあった。

チャンドラセカール賞は、インド生まれの米国の天体物理学者で1983年にノーベル物理学賞を受賞し、プラズマ物理学にも貢献したスブラマニアン・チャンドラセカール氏(1910~95年)を記念したもの。アジア太平洋物理学会連合プラズマ物理部門(現分科会)が2014年に創設した。

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    太陽の黒点ができる仕組みの模式図(国立天文台提供、一部改変)

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