物質・材料研究機構(NIMS)は9月16日、太陽光に対して20%以上の光電変換効率を維持しながら、1000時間以上の連続発電に耐えられる、従来の10倍以上耐久性が高いペロブスカイト型太陽電池を開発したことを発表した。
同成果は、NIMS エネルギー・環境材料研究拠点 太陽光発電材料グループの白井康裕グループリーダーらの研究チームによるもの。詳細は、2本の論文としてまとめられ、1本目は米国化学会が刊行する化学と科学のインタフェースに関する全般を扱う学術誌「ACS Omega」に、2本目はエネルギーハーベスティングや変換、貯蔵などに使用される材料に関する全般を扱う学術誌「Advanced Energy Materials」にそれぞれ掲載された。
日本は2030年度の温室効果ガス削減目標として、2013年度比で46%の削減を掲げるが、それを太陽光発電で実現するには、2030年までにこれまで設置された面積と同程度設置する必要があるという。
しかし、日本の太陽光発電の設置率(国土面積あたりの太陽光発電の導入量)は主要国で1位であり、これ以上設置するには場所が限られることから、建物の屋根や屋上に加え、壁面や窓への設置、自動車などへの導入なども検討されており、低コストかつ軽量、そして高効率の太陽電池の開発が求められている。
その条件を満たすとして期待されているのが、ペロブスカイト型太陽電池だが、解決すべき課題もまだいくつか存在する。構造上、電子輸送層または正孔輸送層との界面に欠陥があると、太陽光によってペロブスカイト層に発生した電子と正孔の一部は、欠陥を介して電子と正孔が再び結びついてしまう。その結果、電力として取り出せなくなるため、発電効率を向上させるには界面を制御することがとても重要とされている。
また、水分で劣化しやすく、100時間程度の連続発電で効率が半分以下になってしまうという課題もある。耐久性を向上させるためには、電子輸送層または正孔輸送層との界面でブロックし、ペロブスカイト層への水分子の侵入を防ぐ必要があるとされている。
そこで研究チームは今回、これらの課題を克服すべく界面を制御した同太陽電池を開発することに挑み、光照射側から、導電性酸化膜付ガラス、正孔輸送層(酸化ニッケル)、ペロブスカイト層、電子輸送層(フラーレン)、銀電極の順で積層された同太陽電池が開発された。各層の厚さは30~400nmだという。