米Adobeは9月15日(現地時間)、オンライン・デザインコラボレーションツールを提供するFigmaの買収を発表した。現金と株式交換を組み合わせ、買収総額は約200億ドル。必要な続きは2023年に完了する見通しで、成立すれば、2018年のMarketo買収(マーケティングオートメーション:47億5000万ドル)を大きく上回って、Adobeの過去最大の買収になる。

Figmaは、ディラン・フィールド(Dylan Field)氏とエヴァン・ウォレス(Evan Wallace)氏が2012年に開始したプロジェクトから誕生し、2016年に米サンフランシスコで設立された。ブラウザを使って、Webサイトやアプリのデザイン、UIデザインなどを共同で制作・編集するソリューションを提供する。手軽に利用できるオンラインツールであり、ビジュアルでコラボレーションを支援するため、エンジニアやプロダクトマネージャー、マーケターなどデザイナー以外もデザイン制作に参加できる。そうした特徴が受け入れられてユーザーコミュニティが広がり、わずか数年でMicrosoftやGoogle、Netflixといった大企業にも採用されるようになった。

買収取引が完了するまでFigmaは独立した事業運営を継続し、完了後はFigmaの共同設立者兼CEOであるDylan Field氏がFigmaチームを率いる。Adobeは「AdobeとFigmaの組み合わせにより、コラボレーティブなクリエイティビティの新時代が到来する」としている。同社のイメージング、写真やイラストレーション、動画、3D、フォントに関する技術をFigmaのプラットフォームに組み込むという。

ただし、市場の反応は厳しい。Figmaに関しては、プロダクト開発に積極的に採り入れていたMicrosoftによる買収が噂されていた。Adobeはデザインツール「Adobe XD」を展開しており、FigmaがMicrosoft傘下になって競合するのを避ける防衛的な買収という見方がある。Figmaの評価額は100億ドル、年間経常収益(ARR)は22年度に4億ドルに達する見通しだが、評価額の2倍の約200億ドルで買収する投資リスクも指摘されている。15日にAdobeは2022年6月〜8月期決算を発表しており、9月〜11月期の売上高のガイダンスが予想を下回ったこともあって、時間外取引でAdobe株は約17%下落した。