Samsung Electronicsのトップである李在鎔(イ・ジェヨン)副会長が今月、2030年釜山世界博覧会(釜山エキスポ)誘致に向けた尹大統領の特使として欧州を訪問し、英国訪問の際に英国首相ならびに国際博覧会機構(BIE)幹部と会い釜山エキスポ誘致活動を行うほか、英国訪問中にArm買収に向けた交渉を行う可能性が出てきたと韓国の複数メディアが報じている。
Samsungは連結基準で貨幣性資産を125兆ウォン(約13兆円超)ほど保有しているほか、本社(別途基準)が保有する現金だけでも16兆ウォンほど保有するなど、買収という意味では十分とも言える資金がある。また、同社は2016年に米国の自動車電装品メーカーHarmanを10兆ウォン(約1兆円)で買収した後、大規模な半導体企業あるいはその一部事業部門のM&Aの願望を表明し、NXP SemiconductorsやInfineon Technologies、Texas Instruments、ルネサス エレクトロニクスの車載部門などの買収を検討してきたとされるが、実際に買収にこぎつけた案件は出ていない。
一方のArmは、NVIDIAが2020年にソフトバンクより400億ドルで買収することを発表したが、最終的に各国政府やArmの既存顧客などからの反対で破談となっている。結果として、ソフトバンクはArmを売却するのではなく、株式上場に方針を転換し、企業価値の向上を目指しているとされる。
もしArmが上場を果たせば、買収は今以上に困難になる可能性があるため、半導体業界の中でArmの買収に関心がある企業同士が水面下で協力して共同で買収提案を行う動きを見せている模様である。しかし、Armプロセッサは現在、スマートフォンのSoCのほとんどに採用されているほか、近年ではデータセンター向けSoCなどでも活用されるようになっており、そうした顧客の多くがArmが特定の1社に買収されることの影響を危惧しており、Samsungについても、一部の情報筋からの不特定情報ながら、Samsungの李在鎔副会長がIntelのPat Gelsinger CEOとひそかに会って、IntelとSamsungが共同でArmに買収を持ち掛ける話し合いをしたという話も出ているという。
SamsungにとってのArm買収の魅力
Samsungとしても、Armは以前から買収候補企業のウチの1社として位置付けていたようだ。Samsungは2030年までにシステム半導体業界1位の座を目指すことを掲げており、もしSoCの中心となるCPUコアIPを手掛けるArmを手の内に収められれば、その事業に対する相乗効果は強みを出せていない車載半導体関連の企業買収よりも大きいと韓国の半導体業界関係者は見ているという。
なお、Armの買収については、Samsung以外にもSK hynixの朴正浩(パク・ジョンホ)副会長(親会社であるSK Telecom副会長兼務でSKグループの崔会長を支え、半導体および通信事業の事実上の最高責任者)が、2022年初めにArm買収に向けたコンソーシアム構築の可能性について、「Armは、ある特定の1社で買収できる企業ではないと思う」との見解を示し、「戦略的投資家とともにコンソーシアムとして買収する案を検討中」と述べ、Qualcomらとコンソーシアムを結成し、共同買収を検討する意思を表明したと複数の海外メディアが報じていたが、その後、表立った具体的な動きは出てきていない。