昭和大学と富士通Japanは9月15日、電子カルテシステムの診療データから疾病を予測する、診療支援AI(Artificial Intelligence:人工知能)技術の開発に向けた共同研究を9月から開始することを発表した。
今回の研究では、AIを用いた医師の診断支援による医療水準の均てん化や、診療業務の効率化を目的として、昭和大学横浜市北部病院(神奈川県横浜市)の臨床現場において、電子カルテシステムに入力された診療データから即時に疾病を予測し、治療方針の候補などを医師に提案する診療支援AI技術の開発に取り組む。
診療支援AI技術の活用によって、迅速な鑑別診断など診療業務の効率化が期待できる。加えて、重要な疾患の見落とし防止など、医師の業務を幅広く支援するとともに、医療水準の均てん化にも寄与するとしている。医療従事者の働き方改革を支援することで、患者サービスの質の向上にもつなげる狙いがある。
具体的には、患者の主訴や所見などの電子カルテシステムに記載されたテキストデータと、病院に蓄積された過去の診療データから総合的にデータの関連性や類似性を数値化して、疾患分類を評価するための診療支援AI技術の開発を進める。
昭和大学横浜市北部病院が保有する過去20年分の電子カルテシステムに蓄積された診療データと、同院の専門医による医学的知見やアドバイスに基づいて、電子カルテシステムに記載されたテキストデータを自然言語処理技術で解析し、鑑別診断候補となる疾患分類をスコアリング評価した結果を提供する。この分析結果と過去の診療データを組み合わせて、総合的にデータの特徴量を算出し、類似症例検索アプローチによる疾患候補の提案を行う仕組みだ。
両者は今回の共同研究で開発するAI技術を2022年度中に臨床現場に適用し、有効性の検証を進めながら継続して患者本位の医療や高度な医療の推進に貢献するとしている。また、院内での本運用だけでなく、他の昭和大学附属病院に向けたサービス提供や研修医向け教育コンテンツへの展開など、昭和大学病院グループの診療全体への寄与を目指すとのこと。