富士フイルムは9月8日、電子材料事業をさらに拡大するため、約20億円を投じて最先端半導体材料に対応した生産設備を熊本に新設すると発表した。
今回、電子材料事業の中核子会社である富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズ(本社:神奈川県横浜市)が、熊本県に立地する富士フイルム生産子会社の富士フイルム九州の敷地内に、半導体製造プロセスの基幹材料であるCMPスラリを生産する最新鋭設備を導入する。同設備は、2024年1月の稼働を予定しており、同社にとってと国内初のCMPスラリ生産設備となるという。
CMPスラリは、半導体表面を均一に平坦化するCMP工程で用いられる研磨剤で、その市場は年率10%で成長すると見込まれており、富士フイルムでは、米国・台湾・韓国に生産拠点を有しているが、日本国内には製造拠点がなかったという。今回の熊本での設備新設は、TSMCの熊本進出を受けて決めた模様である。
同社では、熊本を含む世界4拠点の生産体制の構築により、CMPスラリの安定・迅速供給を実現することで、さらなるビジネス拡大を図り、研磨後の不純物を取り除くポストCMPクリーナーを有する強みを生かしたトータルソリューションの提案で、顧客が抱える課題を解決し、半導体のさらなる性能向上に寄与していくとしている。
また同社は、CMPスラリならびにポストCMPクリーナーのみならず、フォトレジストやフォトリソ周辺材料、ポリイミド(半導体の保護膜や再配線層の形成に使用)、イメージセンサ用カラーフィルタ着色感光材料などの幅広い製品ポートフォリオを有しているほか、グローバルの安定供給体制、高い研究開発力、顧客との強固な信頼関係を強みに、積極的な設備投資などの成長戦略を推進するともしている。
熊本に装置・材料メーカーが集結
なお、熊本県の半導体関連産業関係者によると、富士フイルムに先立ち、半導体関連製品を手がけるフェローテックマテリアルテクノロジーズが熊本県大津町に新工場建設を決定し、2024年の操業開始を目指すという。また、最先端工場向けの装置メンテナンスおよびインフラに関するサポートを一括して提供するジャパンマテリアル(本社:三重県)は、2022年11月をめどに熊本県菊陽町の新工場を稼働させ、2024年に稼働する予定のJASM向けの配管加工などを始める予定のほか、2023年をめどにガスや薬品を安全に保管する倉庫を設ける予定としている。さらに、東京エレクトロンは子会社の東京エレクトロン九州 合志事業所に開発棟を建設することを決めており、2023年春着工、2024年秋竣工を計画しているという。
関係者によると、JASMの設立に伴い、装置・材料メーカーの熊本進出が今後も続くことが見込まれるという。また、JASMも使用する材料の5割を国内調達することにしている模様だが、まだ予定の半分しか国産からの材料調達のめどがついておらず、国産材料サプライヤに好機が訪れているという。また熊本県では、半導体分野だけではなく、バッテリや医療関連の企業誘致にも注力しているという。