NTTは9月12日、「グラフェン光検出器」の世界最速級となるゼロバイアス動作(220GHz)を実現したこと、ならびにグラフェンにおける光-電気変換プロセスを解明したことを発表した。
同成果は、NTT 物性科学基礎研究所(BRL) 量子科学イノベーション研究部の吉岡克将研究員、同・若村太郎研究主任、同・橋坂昌幸特別研究員、物質・材料研究機構(NIMS)機能性材料研究拠点の渡邊賢司主席研究員、NIMS 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点の谷口尚拠点長、NTT BRL 量子科学イノベーション研究部の熊田倫雄特別研究員兼グループリーダらの共同研究チームによるもの。詳細は、英科学誌「Nature」系の光学に関する全般を扱う学術誌「Nature Photonics」に掲載された。
光検出器は光信号を電気信号に変換するための装置であり、広帯域かつ高速で動作する光検出器の実現が求められている。そうした要求を満たすとして期待されている材料が、炭素原子が1原子分の厚みでもって六角形格子構造に並んだ2次元(シート状)物質のグラフェンだという。
これまでのグラフェン光検出器に関する研究により、テラヘルツ(THz)波から紫外光までの超広帯域で動作すること、わずか原子一層で2.3%ほどの光を吸収するため、高効率化が可能であることが示されていたが、ゼロバイアス下の実証動作速度はデバイス構造や測定機器の問題により70GHzに制限されており、200GHzを超えるという理論的期待には届いていなかったという。そのため、グラフェンが本来持っている応答についての調査も行われていなかったという。
そこで研究チームは今回、消費電力および信号雑音比の観点で応用に向けて必要とされるゼロバイアス動作が可能な光熱電効果に着目し、グラフェンにおける光-電気変換の研究を行うことにしたという。
具体的には、NIMSにおいて成長した最高品質の六方晶窒化ホウ素を用いて、NTTにてグラフェンの両面を保護し清浄なデバイスを作製し、測定を行ったという。