NECは9月13日、神奈川県と兵庫県に100%再生可能エネルギーを活用したグリーンデータセンターを新設すると発表した。同日には、新たなデータセンターの特徴と同社のデータセンター事業で注力する領域に関するオンライン記者説明会が開かれた。
新設予定のデータセンターは、「NEC神奈川データセンター二期棟」(2023年下期解説予定)と、「NEC神戸データセンター三期棟」(2024年上期開設予定)だ。両データセンターとも活断層や沿岸部から距離があり、各種ハザードマップの対象外のエリアとなる災害リスクの低い立地での建設を進める。
100%再生エネルギーを利用するデータセンターの開設・運用は、NECとして初の取り組みとなり、データセンター新設にあたり、同社は今回、300~400億円の投資を実施するという。
2つの証書で環境価値を証明
2つのデータセンターは、グリーン電力証書とトラッキング付き非化石証書によって、自然エネルギーにより発電された電力の環境付加価値と非化石電源により発電された電力の環境価値を証明した再生エネルギーのみで稼働させる。なお、NEC神戸データセンター三期棟については、太陽光発電による自家発電も組み合わせる予定だ。
どちらのデータセンターも、集中熱源、冷暖分離、発熱状況に応じた風量制御などの総合的な省エネルギー対策を施しており、データセンターの電力効率を示すpPUE(Partial Power Usage Effectiveness、パーシャルピーユーイー)は1.16((設計値)となる。
データセンターの入館受付では、運転免許証による本人確認を無人で行う方式を採用する。また、カメラを利用したウォークスルー顔認証で入館し、サーバルームなどへの入室にあたってはICカードと生体認証の2要素認証を採用する予定だ。
セキュリティ面でも各種レギュレーションに対応する予定だ。例えば、金融機関などにおけるシステムの安全対策ガイドラインである「FISC 安全対策基準」の設備基準への準拠、セキュリティにおける内部統制を評価する「SOC2 Type2 保証報告書」の取得のほか、情報セキュリティマネジメントシステムの国際規格「ISO/IEC 27001」、クレジットカード会員情報保護を目的とした国際基準「PCI DSS(Payment Card Industry Data Security Standard)」などにも対応する。
今後はクラウド事業者とのコネクティビティを強化
NECは現在、企業・自治体などの用途に応じて3つのタイプのデータセンターを提供している。1つは「クラウドHUB」で、2022年4月からSCSK印西キャンパスに開設している「NEC印西データセンター」はこれにあたる。
同データセンターでは、SCSKと共同でクラウドサービスプロバイダーやキャリア、IX(インターネットエクスチェンジ)事業者の誘致を行って「インターコネクテッドエコシステム」を形成し、閉域かつ専用線接続によってパブリッククラウドにシームレスに接続できるネットワークサービスを提供する。
2つ目が「コアDC」で、今回発表された2つのグリーンデータセンターはこのタイプとなる。主に基幹系のシステムにおける利用が中心となり、クラウド事業者も利用する。Amazon Web Service、Microsoft Azure、Google Cloud Platform、IBM Cloud、Oracle Cloud Infrastructure、Salesforce(東京のみ)のクラウドに閉域での複数接続が可能だ。このほか、「NEC Cloud IaaS」との閉域接続も可能で、ハウジングエリアとクラウドエリアを構内接続することもできる。
また、東日本・西日本間でデータセンターネットワークを整備しており、バックアップ用途でも利用される。
3つ目の「地域DC」は地方公共団体や地場企業向けに提供するデータセンターで、全国13拠点に配置している。今後はデジタル田園構想への対応を検討している。
今後、NECのデータセンター事業では、パブリッククラウドへの接続性とグリーンデータセンターの領域を強化する。
背景には、クラウドシフトやDXを進めるにあたって第3のプラットフォームとしてクラウド活用が必須になってきていることと、脱炭素社会への対応に向けて企業がESG(環境、社会、ガバナンス)経営やCO2排出量削減などに取り組んでいることがある。
NEC マネージドサービス事業部門長の上坂利文氏は、「当社のようなSIer系のデータセンター事業者は、事業規模が大きいものの、成長率が低くなっている。データセンター市場では、クラウド事業者、IX事業者、キャリアとの接続拠点を有するデータセンター事業者の成長率が高く、当社もクラウド事業者などとのコネクティビティを強化することにより、成長率を高め、事業を拡大していく」と説明した。