一般に、銀行などの金融機関は保守的な性格が強い組織に見られがちだ。確かに、安定稼働が求められる社会のインフラであり、個人情報保護が厳格に義務付けられていることなどから、新しい取り組みを進めにくい面があることは否めないだろう。

一方で、金融機関に求められる厳しい条件の数々をクリアしながら、多くのイノベーションを創出しているのがSMBCグループである。

同社はここ数年で次々と新たなデジタルサービスを創出し、圧倒的なスピードでDXを推進し続けている。ではなぜ、SMBCはイノベーションを生み出し続けられるのか。

6月23日、24日に開催された「TECH+ EXPO 2022 Summer for データ活用 データから導く次の一手」に、三井住友フィナンシャルグループ 執行役専務 グループCDIOの谷崎勝教氏が登壇。同社におけるデジタル戦略と、それを支えるデータ活用について語った。

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UI/UX改善で顧客接点を増やす

谷崎氏はまず、SMBCグループにおけるデータ戦略の基本的なスタンスから説明を始めた。

同社がデータ戦略の要に置くのが、顧客接点をいかに増やすかである。顧客接点が増えれば、その分データも蓄積され、いち早くデジタル戦略を先に進められるからだ。

一方で、旧来の日本企業は顧客接点の前にインフラを重視する傾向があり、顧客接点の検討は最後に回されがちだった。「それではやりたいことをやるスピード感が失われ、結果的にコストもかかってしまう」と谷崎氏は指摘する。

そこで重要になるのが、各サービスにおけるUI/UXの改善だ。

SMBCグループは、「SMBCダイレクト」などのリテール向けアプリケーションをリニューアルし、UXを改善した。それにより、顧客のアプリ利用が促進され、データの蓄積も加速したという。同アプリのユーザー評価は「競合他社と比べても高く、グッドデザイン賞も受賞している」と谷崎氏は胸を張る。

さらに、個人向けだけでなく、法人向けのサービスについても改善を進めている。例えばホールセール向けアプリ「Web21」は操作画面を刷新し、使い勝手を向上。処理できるデータ量も引き上げるなど、業務のさらなる効率化を可能にした。

  • UI/UX向上を起点に起こる好循環

また、キャッシュレス決済領域でも、次世代の決済プラットフォーム「stera」を提供。谷崎氏は「小売店のスタッフ、顧客が共に快適に利用できるよう考え抜かれたUI/UXを搭載している」と説明する。このsteraは、バーコードで在庫管理や入出庫管理が行える「assetforce for stera」と連携することで、販売管理や棚卸資産管理、資産状況の見える化などもワンストップで行えるようになっている。

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