名古屋大学(名大)と慶應義塾大学(慶大)は9月9日、空飛ぶクルマが頭上を飛行する様子を体感できるシミュレータを用意し、影響の大きい「騒音」について、意識的なアンケート調査と簡易脳波計測に基づく無意識的な感性アナライザによるストレス度評価を比較したところ、一度大きな騒音にさらされた後に音を小さくすると、アンケートではストレスが解消される傾向を示すのに対し、感性アナライザでは無意識のストレスが解消されにくいことを明らかにしたと発表した。
同成果は、名大大学大学院 工学研究科の原進教授、同・大学 未来社会創造機構の上出寛子特任准教授、慶大 理工学部の満倉靖恵教授らの共同研究チームによるもの。詳細は、日本UAS産業振興協議会が刊行する技術論文集「Technical Journal of Advanced Mobility」に掲載された。
空飛ぶクルマに関する研究開発が各所で進められている一方で、空飛ぶクルマやドローンなどの“社会への受け入れやすさ”(社会受容性)については、まだ十分に研究されていないことが課題となっている。社会受容性に関する検討を十分に行っていないと、今後大量のドローンの産業利用や空飛ぶクルマの普及により到来する“空の産業革命”が健全に浸透せず、新たな社会問題が発生してしまうことも懸念されるとする。
そこで研究チームは今回、名大 航空・機械実験棟の飛行性能評価風洞施設に空飛ぶクルマが頭上を飛行する様子を体感できるシミュレータを用意。とりわけ影響の大きい「騒音」に関する社会受容性の評価方法として、2つのアプローチを組み合わせた方法を提案することにしたという。
社会受容性の評価方法の1つは、意識的なストレス度の評価を行える、アンケートによる社会心理学的評価で、もう1つは、生体信号に基づくことで無意識的なストレス度の評価が可能な、感性アナライザを用いた簡易脳波計測によるリアルタイム評価とされた。
研究チームは前回の研究報告により、騒音に対するストレスの有無を判定するために感性アナライザが適用可能であることを、ローターが発生する定常音や金属がキンキンと発生する非定常音など、複数の種類の音源を用いた実験によりすでに明らかにしていた。
そこで今回の研究では、前報と異なり、音源を頭上通過する産業用ドローンの飛行音を加工した音源に絞り、その音量を変えながら何度も聞くことにより発生する、アンケート評価と脳波計測によるストレス度評価の違いについてを明らかにすることにしたという。