京都大学(京大)、東京都立産業技術研究センター(都産技研)、立命館大学の3者は9月9日、次世代パワー半導体材料として注目されている「ルチル型GeO2(r-GeO2)」を中心とした、ルチル型酸化物半導体混晶系(GeO2-SnO2-SiO2)を新たに提案するとともに、実験と計算の両面からの同系の有用性を実証したことを発表した。

同成果は、京大大学院 工学研究科の高根倫史大学院生、同・若松岳大学院生、同・金子健太郎講師(現・立命館大 総合科学技術研究機構 教授)、都産技研の太田優一副主任研究員、立命館大 理工学部の荒木努教授らの共同研究チームによるもの。詳細は、米国物理学会が刊行する材料科学とその関連分野全般を扱う学術誌「Physical Review Materials」に掲載された。

窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)や酸化ガリウム(Ga2O3)、ダイヤモンドをはじめとする、3.4eVを上回る超ワイドバンドギャップ(UWBG)半導体は、大きな絶縁破壊電界値を持つことから、低損失かつ高耐圧のパワーデバイスを実現する次世代半導体材料として期待されている。

一方、従来のUWBG半導体は、基板が高価であったりpn両型伝導の制御が困難であることなどが、デバイスの開発や応用において課題となっていた。そうした中、近年、新規UWBG半導体として注目されるようになってきたのがr-GeO2だという。

注目される理由として、r-GeO2は以下の4点の優れた点が挙げられている。

  1. β-Ga2O3と同程度の大きなバンドギャップ(4.7eV)を有すること
  2. pn両型伝導の可能性ならびに高い電子/正孔移動度が理論的に予測されていること
  3. β-Ga2O3を超える熱伝導率を有すること
  4. 安価な手法でバルク結晶が合成可能であること

加えて、2020年には薄膜の成長も報告されており、現在、パワーデバイス応用を目指したr-GeO2の研究が加速しているという。

そうした背景を踏まえ研究チームは今回、はじめにヘテロ接合デバイスなどさらなる幅広いパワーデバイス応用を見据え、r-GeO2を中心とした新たな混晶系としてGeO2-SnO2-SiO2を提案することにしたとする。それと同時に、この混晶系の有用性を実験と理論の両面から実証することを目指すことにしたという。