事故による子供の傷害予防を目的に活動するNPO法人のSafe Kids Japanと、子供の車内置き去り検知センサなどを取り扱う複合型専門商社の三洋貿易は9月9日、子供の車内置き去り事故防止の取り組みと、置き去り検知センサの導入状況に関する説明会を開催した。
車内置き去り事故の防止を目指す2者が説明会を開催
Safe Kids Japanは、「子供の事故は予測でき予防可能である」という考えのもと、その予防に社会全体で取り組むための研究および啓発活動を行っている。
一方の三洋貿易は、バスに取り残された乗員を検知できるIEE製のミリ波レーダセンサ「LiDAS」の国内取り扱いを行い、個々人の意識啓発に加えて、テクノロジーなどの仕組みを活用し事故を予防する重要性を訴えているという。
2022年9月に発生した認定こども園での送迎バス園児置き去り事故以降、三洋貿易に製品や導入に関する問い合わせが多く届いていることを受け、両者は説明会の開催に至ったとしている。
同説明会には、Safe Kids Japan理事長の山中龍宏氏、三洋貿易上級執行役員の平澤光康氏、同社の堀内登志徳氏らが登壇した。
車内子供置き去りに関する実態調査を実施
三洋貿易は2022年7月、自動車内の子供置き去り事故における潜在リスクの把握を目的とした実態調査の結果を公表した。
同実態調査では、乗用車編と送迎バス編に分けて調査が行われ、送迎バス編では、「直近1年間で送迎バスに園児を残したまま車を離れた経験がある」との回答が約5.6%だったことが報告されている。
なお、「置き去り検知センサなどの車内置き去り防止システムの送迎バスへの導入を義務化すべきか」との問いに対し、「義務化されるべき」と回答しなかった人のうち約65%は「気を付ければ防ぐことができる事故だから」と回答したとのことだった。
人の注意力だけでは防げない子供の事故
今回の会見で、山中氏は、0~2歳児の日常生活における事故が一定数発生し続けていることを例に挙げ、「人の注意力だけで事故を確実に防ぐことはできない」と断言した。
「育児の現場でも、毎年同じような事故が同じような頻度で発生している。これは保育の現場でも同じことで、今回のような事故も絶対に発生しないとは言えない」
そう語る山中氏は、約1年前にも今般と同様の送迎バス置き去り事故が起こっていたことを例に挙げ、「周知徹底などのこれまでと同じ対策をとるだけでは、また必ず同じような事故が起こってしまうだろう」と提言した。
三洋貿易が目指す今後の取り組み
三洋貿易の平澤氏は、子供の車内置き去り事故を避けるためには、前提として目視による車内の確認が不可欠だとしつつも「一定数発生するヒューマンエラーに対して、センサなどの仕組みが最後の砦になる必要がある」と話す。
同社が取り扱うバス用子供置き去り検知センサのLiDASは、2020年に量産を開始しており、アメリカではスクールバス50台程度での導入事例があるという。一方、日本国内では2023年度中のリリースを予定しており、堀内氏によると、2022年12月ごろには国内での実証実験を開始できるよう、調整を行っているとのことだ。
LiDASについては、今回の事故を受けた問い合わせが約20件来ているといい、保育施設からの導入検討や、自治体の補助金検討に向けた導入コストに関する問い合わせがあったという。
平澤氏は「車内の置き去り検知システムの存在がまだ世の中に浸透していないと思うので、引き続き、仕組みで事故を防ぐことの必要性を訴えていきたい」と語った。
「今のままでは、必ず今後も事故が発生する」
平澤氏は、「車内置き去り検知システムの存在が認知されること、広く浸透することで、現場での早期導入や精度の充実に拍車がかかると考えている」と語った。
また山中氏は、「世の中で事故が起こっていても『まさか自分に限って』と考える人が多い今のままでは、必ず今後も事故が発生する」と推測し、「今後は、送迎バスにセンサの取り付けを義務付けるなど規制を厳しくして、社会からも厳しい目を向ける必要がある」と語気を強めた。