大阪教育大学(大教大)は9月8日、活動銀河核の一種である「ブレーザー」の代表的天体として知られる「とかげ座BL」が、2020年に観測史上最大級の規模で明るくなったことが確認された際に、活動銀河核では稀にしか見られない変動現象である「準周期的振動」(QPO)を検出したことを発表した。
同成果は、大教大 天文学研究室の松本桂准教授を含めた、14か国の天文学者が参加する国際共同研究チームによるもの。詳細は、英科学誌「Nature」に掲載された。
ブレーザーとは、活動銀河核の中心にある大質量ブラックホールから双極方向に吹き出すプラズマの高速流体「相対論的ジェット」(ジェット)のどちらか一方の向きが、ちょうど地球を正面に捉えている場合のものを指す。活動銀河核の中でおよそ0.1%を占め、中でも極めて明るく輝き、また電波放射も強いことが特徴となっている。
「とかげ座BL」はそうしたブレーザーの代表的天体で、その正体は地球から約10億光年の距離(宇宙の膨張による赤方偏移は0.069)の楕円銀河の中心部に位置する、太陽の1億7000万倍の質量を持つ大質量ブラックホールであり、吹き出しているジェットは、最大で光速の99.8%にも及ぶという。
ブレーザーは、明るさがさまざまな時間スケールで激しく変動することも特徴で、大半の変動はランダムながら中にはQPOとなる場合もあり、何らかの系統的な変動現象の発生が示唆されている。
そうした中、2020年7月20日頃にとかげ座BLが大規模な増光(アウトバースト)を起こしたことがキャッチされ、世界の37の天文台と、フェルミ・ガンマ先宇宙望遠鏡による国際共同観測が行われた。アウトバーストは同年10月17日頃まで継続し、8月21日と10月5日に観測史上最大級の明るさが記録された。またこの国際共同観測によって、アウトバーストの最も明るい時期において顕著な短時間変動が検出された。特に最短で約13時間周期で生じる可視光、偏光、およびガンマ線のQPOの発生が明らかにされたという。