妊娠・出産・育児のサポートから小中高・大学・社会人教育、シニア向けの事業など、「人」の成長を軸に社会課題解決を目指すベネッセグループ。2018年よりDX実現を目指す取り組みを開始したが、多様な事業を手掛ける同社では難航し、その1年後には活動を大幅縮小するに至った。しかし、現在では、「赤ペン先生」のデジタル化、高い専門性をもつ介護職員の暗黙知を具現化した「マジ神AI」の開発、オンライン動画学習サービス「Udemy Business」の展開など、各事業領域から新たなDX事例が数多く生まれてきている状況だ。失敗を経て同社が着目したのは、「事業フェイズにあわせたDX推進」と「組織のDX能力向上」だったという。
8月25、26日に開催された「ビジネス・フォーラム事務局 × TECH+ EXPO 2022 for Leaders DX Frontline 不確実性の時代に求められる視座」で、ベネッセホールディングス 専務執行役員 CDXO(Chief DX Officer)兼 Digital Innovation Partners本部長/ベネッセコーポレーション 取締役の橋本英知氏が、同社によるこれまでの取り組みについて紹介した。
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さまざまなことに一気に取り組もうとして失敗……「人」にフォーカスしたDXへ
ベネッセグループでは、2018年に「グループデジタル本部」を立ち上げ、人財戦略、開発体制の拡充、データ戦略、オフィス環境の整備などさまざまな領域での目標を掲げ、DX実現に向けた取り組みをスタートさせた。しかし、橋本氏は「人財不足が深刻で、現実的にはほとんど進まなかった」と振り返る。
そこで翌年からは、「人」にフォーカス。エンジニア経験を経てプロダクト開発を担うDX人財候補生を新卒で7名採用し、年間約40名の中途採用も実施した。しかし、約2万人の従業員を抱えるベネッセグループの規模に対して、これではあまりに少なすぎたという。一方で、事業の状況は刻々と変化していた。デジタルを活用した競合は、グローバル/異業種からの参入もあり年々増加。デジタル要員のニーズが高まり、充足数とのギャップはさらに広がる一方だった。
「やっていることと事業の実態がかけ離れていった2年間でした。このギャップをどう埋めるかが、2020年からの課題となりました」(橋本氏)
さまざまな領域でビジネスを展開しているベネッセグループは、顧客層が幅広く、事業モデルが多様であることが特徴だ。多くの社内システムが存在し、EOL(End Of Life)対応や古いアーキテクチャによる足かせが大きな課題となっていた。また、事業が多様な分、競合も多く、各領域でデジタル・ディスラプションが起きる可能性も高い。