デジタル社会に向けた動きはコロナ禍により加速したと言われるが、現在はまだ道半ばといったところだろう。消費者の生活様式は変わり、商品やサービスへの期待も変わりつつある。では、デジタル時代におけるマーケティングの基本はどのように変化しているのか。

株式会社顧客時間で共同CEO 取締役を務める奥谷孝司氏(オイシックス・ラ・大地 専門役員 Chief Omni-Channel Officer、イー・ロジット 社外取締役、Engagement Commerce Lab. 代表取締役)が、8月18日にオンラインで開催された「流通ニュース×TECH+セミナー リテールDX デジタルシフトで顧客との接点を強化する」で解説した。

暮らしとチャネルがデジタルにシフト

コロナ禍により進んだと言われるデジタル社会へのシフトだが、奥谷氏は「イノベーションの普及には40年かかる」という東京大学・森川博之教授の言葉を引用しながら、現在地を次のように説明する。

「インターネットが身近になり始めた時期を2000年とすると、デジタル社会(の実現)は2040年。まさにその中間地点でコロナ禍が起こったということになります」(奥谷氏)

コロナ禍は小売業など多くの業界に打撃を与えた。持ちこたえられなかった企業もある中、生き残った企業もある。残った企業の共通点を奥谷氏は「オムニチャネル戦略をしっかりと進めてきた会社だ」と分析する。例として、米Whole Foodsを買収してリアルでの顧客接点を獲得し、店舗をリアルの買い物の場だけでなく、物流拠点としたAmazon、オンラインショップで購入した商品の店舗受け取りサービスを提供したカインズ、ニトリなどの企業を紹介した。これらの企業には、「オムニチャネルにより、コロナ禍でも顧客との接点を失わなかった」「デジタルシフトを加速させた」という特徴があると言う。

奥谷氏は著書で、「チャネルシフト」フレームワークを提唱している。顧客の「選択」と「購入」が行われる場を、それぞれ「オンライン」「オフライン」に区分し、OMO(Online Merges with Offline)に取り組むことで、シームレスにつなぐというものだ。特にリアルが強い小売店に対しては、「ネットでのお客さまとのツン狩りを生かすことにより、デジタルで店舗を守ることができる」と持論を展開する。

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