電通国際情報サービス(ISID)とグループ会社のエステックは9月1日、次世代モビリティのバーチャルシミュレーション拠点として「VDX Studio(Virtual Driving Experience Studio」を開設した。
「VDX Studio」は、自動車メーカーやサプライヤーだけでなく、モビリティビジネスに携わる幅広い企業を対象に、実車試験に基づく高精度なシミュレーションモデル・ソフトウェアと、実車走行のような体感が可能なドライビングシミュレータの両方を提供するレンタル型スタジオだ。
「VDX Studio」では、実車では困難なテストを容易に条件変更しながら繰り返し実施することが可能。実車が存在しない開発初期段階でサービスや機能の妥当性を体感・検証することで、開発の手戻りを減らす。さらには、映像・音・振動・コンテンツが一体となった走行テストを通じ、顧客体験や人間の感性を重視した新たなモビリティや関連製品・サービスの創出を支援する。
ISID 製造ソリューション事業部 先進CASE技術部部長の友安大輔氏は、VDX Studioを開発した背景について、次のように説明した。
「小型ドライビングシミュレータの提供を通じ、車両の動的性能を評価する部署を中心としたニーズの高まりが見えてきた。小型シミュレータでは感性評価は難しいが、人間を中心とした感性評価を実車が存在しない開発初期に実施することを可能にするため、中型ドライビングシミュレータと小型ドライビングシミュレータの長所を組み合わせたところを狙っている」
また、友安氏は競合に対する差別化のポイントについて、「われわれとエステックの2社で提供している点が強みと言える。エステックは実車の試験をやっており、そのデータに基づくシミュレーションモデルを組み込むことができ、必要なモデルがあれば提供することが可能。ドライビングシミュレータを中心としたトータルソリューションをワンストップで提供できる」と語っていた。
人中心の感性評価を実現する各種設備
「VDX Studio」では、映像・音・コンテンツが一体となったドライビングシミュレータによって、人中心の感性評価を実現する。設備としては、Crystal LEDディスプレイ、映像コンテンツ&車両モデル、車両モックアップ、計測システム、立体音感システム、電磁加振機、モーションプラットフォームが備わっている。
Crystal LEDディスプレイ
ドライバーの左右正面に配置された1.2mm/1.5mmの大画面が切れ目なく設置されている。これにより、実車さながらの速度感と臨場感を味わえる。
高精度な車両モデル
テストコースの走行データと合わせこんだ車両モデルが実車の動きを忠実に再現する。ドラビリ、低G領域、NVといった性能評価を対象とした車両開発にも対応する。
立体音響システム
簡易無音空間にスピーカー15台と大型サブウーハー1台(計16ch)から構成されたプロ仕様の立体音響が設置されている。実車の伝達経路分析結果を取り込んだサウンドシミュレータをリアルタイムで出力し、多点スピーカーのイコライゼーション処理で運転者の耳の位置でリアルな音を再現する。
3つのサービスメニューの特徴
「VDX Studio」は、ドライビングシミュレータの設備に加えて、「コンサルティングサービス」「ウォークインサービス」「プロフェッショナルサービス」を提供している。
コンサルティングサービス
顧客ごとの課題をヒアリングし、VDX Studioの活用方法やシステム構成、機器のカスタマイズを提案すり。利用期間で検証と必要データの取得を確実に実現できるよう、専門のコンサルタントが試乗内容のカスタマイズなども交えながら、スタジオのより効果的な使用方法を事前検証する。
ウォークインサービス
スタジオ設備を1日単位でレンタルできるサービス。検証時に必要な車両モデル・コンテンツデータは利用者が開発中のデータを持ち込むことでき、検証データを持たない利用者にはコンサルティングサービスを基に、ISIDとエステックがデータを提供する。
プロフェッショナルサービス
専任スタッフが指定された条件下でバーチャルテストを代行し、各種テストや分析結果など顧客の要望に合わせたレポートを提供する。
友安氏は、「VDX Studio」の適用業務の例としては、「車両性能開発」「EV開発」「音評価・音作り」「HMI開発×自動運転」「マーケティング」「人件研究」を挙げていた。