半導体市場動向調査会社である仏Yole Groupは、シリコンフォトニクスに関するレポートを発表し、データ通信用光トランシーバ市場におけるシェアが現在の20%から2027年には30%へと、今後増していくことで、そのダイ市場は2021年の1億5100万ドルから年平均成長率(CAGR)36%で成長し、2027年には9億7200万ドルへと成長するとの予測を明らかにした。

2021年および2027年のシリコンフォトニックダイの用途別売上高でともに最大なのは、データセンタトランシーバーで、CAGR22%と予想されている。2021年の場合、それ以外の用途として、ロングホールトランシーバ、5Gトランシーバ、バイオ分野(免疫などの測定)、光ファイバジャイロスコープなどに使われているが、2027年までにフォトニックプロセッシング、コンシューマヘルス、光インターコネクト、電気信号と光信号の変換を担う回路ユニット「フォトニックエンジン」を内蔵するCo-packaged enginesなど新たな用途が伸びてくることが期待される。

  • 2021年および2027年のシリコンフォトニックダイの市場規模

    2021年および2027年のシリコンフォトニックダイの市場規模と2027年における用途別CAGR (出所:Yole Group)

また、2022年時点でのオプティカルトランシーバー向けシリコンフォトニクス・サプライチェーンを見ると、設計、SOI基板、エピウェハ、ファウンドリ、トランシーバ、システムといった流れになるが、日本企業としては、SOIサプライヤとして信越半導体、システムサプライヤとして富士通、NECといった名前が挙がっている。

2021年のトランシーバシステム市場で数量ベースで58%を有し、トップとなっているのはIntelで、そのほかにCiscoやMarvell/Inphi、独Sicoya、米Acaciaなどが市場拡大を狙っている。

  • 2022年時点でのオプティカルトランシーバー向けのシリコンフォトニクス・サプライチェーン

    2022年時点でのオプティカルトランシーバー向けのシリコンフォトニクス・サプライチェーン (出所:Yole Group)

歴史的に、シリコンフォトニクスはSOI上で開発されてきたが、SOIウェハは高価であり、シリコンが必ずしもすべての異なるフォトニクス機能にとって最適な材料であるとは限らない。例えばInPはIntelにおける重要な材料の1つであり、InPチップレットの開発が、シリコンフォトニクスにおけるIntelのビジネスの成功の鍵となっている。

また、データレートの増加に併せてシリコン上の高速変調がボトルネックになりつつあることから、LNO薄膜、InP、BTO、ポリマー、プラズモニック材料など、さらなる高性能化に向けたさまざまな新規材料が開発されており、例えばAristaは2022年3月に開催されたOFC 2022 カンファレンスにて披露した800Gトランシーバの変調器のプロトタイプには薄膜LNOが採用されたほか、RiberはBTOを、Lightwave Logicはポリマーでの開発を進めているという。さらに、オプティクスの機能性が向上するにつれ、シリコンフォトニクスの定義は、シリコン以外の材料の統合を含むように拡大されているともしているが、CMOSプロセスの製造環境は、コストメリットを得るためには依然として必要だともしている。

  • シリコンの次のフォトニクス基板材料用途別分類

    シリコンの次のフォトニクス基板材料用途別分類 (出所:Yole Group)